(インフルエンザになりました)
仕事中、妻の美希からそうメッセージが届いた。俺は一瞥だけして、とりあえずOKスタンプを返した。
インフルエンザになった、だから何だというのだ。
この時の俺はまだ、そのメッセージの意味をきちんと理解していなかった。
その数分後、見知らぬ番号から電話がかかってきた。訝しみながら「はい」と出ると、若い女性の声が受話器から聞こえた。
「お仕事中すみません、環奈ちゃんの担任ですが、お父様でいらっしゃいますか?」
「はい、そうですが」
「お迎えの時間になってもお母様がいらっしゃらないので、こちらにお電話させていただきました。今すぐお迎えをお願いします」
こちらに何か言わせる隙を与えぬ速さで、先生は一気に用件を話しきった。状況がのみ込めず、俺はワンテンポ遅れて受話器に話しかけた。
「えっ、今すぐですか?」
困惑する俺に、先生は容赦ない「はい」を突き付ける。
「えっと、今は…」仕事中だ。こんな時にお迎えなんて行けるわけない。美希は一体何を…。
俺がぼやぼやとそんな考えを巡らせている間も、先生はまくし立ててくる。
「ご両親のお迎えが無理でしたら、どなたかお近くにお迎え可能な方はいらっしゃいませんか?」
「近くに両親もいませんので。しばらくそのまま預かっていただくことはできないんですか?」
「何時ごろお迎えに来られるか、お約束だけしていただけますか?」
「えっと…早くて6時…」
「では必ず6時までにお迎えをお願いします」
そして電話は切れた。俺はすぐに美希に電話をかけた。だけど電話は繋がらなかった。
_何やってんだよ。
イラつきながらスマホと向き合っていると、「どうしたんすか?」と後輩に声をかけられた。
「娘の幼稚園からお迎えの時間だから今すぐ迎えに来いって」
「行ったらいいじゃないですか。こういう時のためのフレックス制じゃないですか」
確かに、こういう時こういった制度が整っている会社はありがたい。俺は一瞬抜ける旨をホワイトボードに書き込んで、会社を出た。
仕事中、妻の美希からそうメッセージが届いた。俺は一瞥だけして、とりあえずOKスタンプを返した。
インフルエンザになった、だから何だというのだ。
この時の俺はまだ、そのメッセージの意味をきちんと理解していなかった。
その数分後、見知らぬ番号から電話がかかってきた。訝しみながら「はい」と出ると、若い女性の声が受話器から聞こえた。
「お仕事中すみません、環奈ちゃんの担任ですが、お父様でいらっしゃいますか?」
「はい、そうですが」
「お迎えの時間になってもお母様がいらっしゃらないので、こちらにお電話させていただきました。今すぐお迎えをお願いします」
こちらに何か言わせる隙を与えぬ速さで、先生は一気に用件を話しきった。状況がのみ込めず、俺はワンテンポ遅れて受話器に話しかけた。
「えっ、今すぐですか?」
困惑する俺に、先生は容赦ない「はい」を突き付ける。
「えっと、今は…」仕事中だ。こんな時にお迎えなんて行けるわけない。美希は一体何を…。
俺がぼやぼやとそんな考えを巡らせている間も、先生はまくし立ててくる。
「ご両親のお迎えが無理でしたら、どなたかお近くにお迎え可能な方はいらっしゃいませんか?」
「近くに両親もいませんので。しばらくそのまま預かっていただくことはできないんですか?」
「何時ごろお迎えに来られるか、お約束だけしていただけますか?」
「えっと…早くて6時…」
「では必ず6時までにお迎えをお願いします」
そして電話は切れた。俺はすぐに美希に電話をかけた。だけど電話は繋がらなかった。
_何やってんだよ。
イラつきながらスマホと向き合っていると、「どうしたんすか?」と後輩に声をかけられた。
「娘の幼稚園からお迎えの時間だから今すぐ迎えに来いって」
「行ったらいいじゃないですか。こういう時のためのフレックス制じゃないですか」
確かに、こういう時こういった制度が整っている会社はありがたい。俺は一瞬抜ける旨をホワイトボードに書き込んで、会社を出た。