気づくと演奏は終わって、客の退場が始まっていた。

 どうしたものか、未だドキドキが止まらない。
 
 そして、俺に新しい思いが生まれてしまった。

 それも、人生が揺れてしまう程の…

「私も…もっと…上手に…吹けたら…」
「夜空?もしかして…」
「私は…」
「ただいま!3人とも!どうだった?今日の演奏は。」

 夜空に1つ、流れ星がかける。

「夜空!?おい、どうした?大丈夫か?」
「!ごめんなさい、大丈夫よ。」
「なんか、あるじゃ」
「朝日には関係ないものよ。大丈夫だから。」

 見るからに大丈夫じゃない。

 髪を耳にかける、その手は震えていた。

 帰りの車でも、夜空は何かを抱えている、虚ろな目をしていた。

 その日の夜俺は出会(でくわ)してしまった。

「夜空、何か言いたいことがあるんじゃない?真昼、あなたもよ。」
「「っ……!」」

 盗み聞きになってしまうが、気になってしまって仕方ない。

「私…もう一度…フルートがやりたい…」

 涙の混じった声、夜空だった。

「ずっと…後悔してたの…あんなことしたこと…私にフルートをやる資格なんて、ないのに…好きで好きで堪らなくて…」

 息を殺して話を聞いていた。

 夜空もだったのか。

「私は…自分の好きなことしてる2人がカッコイイと思ったの。私、ずっとやりたいことがあって…でも、現実的じゃないからって、諦めてた…なのに、また思い出しちゃった…!」

 驚きが俺の大半を占めた。

「何がやりたいの?」
「自分のブランドを作りたいの。元々被服系が好きで、服を自分でデザインするのが楽しくて、いつの間にかその夢ができてた。」
「そう。…いるのはわかってるのよ、朝日!入って来なさい。」

 少しの物音で気づかれてしまったようだ。

 入りづらい。

「李月さんは怒ってるわけじゃないから。」

 父は場を和ませる天才だ。