冬休み最終日まであと2日。
今日は両親のコンサートを見に来た。
というのも、一般席は既に埋まっているのだけれども。
「関係者席がいつもガラガラなのよ。だから、お願い!来て?」
3人で顔を見合わせる。
「私はむしろ行きたいくらいよ。」
「私も行きたかったの!行く行く!」
「俺も、そうゆうの結構興味ある。」
李月はパァっと顔を明るくした。
そんな経緯があって今関係者席にいる。
ラッキーだな、絶対一般席よりも見やすいし、静かにする必要も無い。
飲食可能で、もちろん楽器の音もよく響く。
「あ!パパ来たよ!始まる始まる!」
「お母さんは…っ…」
察するに、ここからは顔が見えないようだ。
「李月さん、セカンドヴァイオリンのすぐ右、ホルンの左前にいる。分かるか?」
「あっ!分かったわ。ありがとう。お義父さんは…」
「コントラバスポジの1番中央寄りの人、あれ。」
「いたわ、朝日。2人ともかっこいい…」
指揮棒を上げ、リズムと取り始めると、異空間を飛ばされた感覚がした。
聞き入ってしまう。
一瞬で体が持ってかれる、金縛りにあったような、とにかく音に「見ろ、聞け」と強制されているような感じがする。
手が震える、呼吸すら忘れそうなくらい、集中している。
言葉が、出ない。
「凄いわ……」
初めに声を出したのは夜空だった。
でも、それ以上は発さなかった。
それ以上の言葉を知らなかった。