数分して着替えてくると、マフラーと手袋をつけさせた。

 両方手袋をつけさせたのだが、片方返されてしまった。

 夜空は右手に、俺は左手に、空いた手は恋人つなぎした。

 そのままズボッとポケット突っ込む。

「夜空ちゃん!また、稽古の相手してね?!」
「次こそ負けないから。」
「えぇ。こちらこそ、負けないわ。」

 じゃあ、とペコッと頭を下げると、戸を出た。

 すっかり雪はやみ、太陽が顔を出していた。

 寒いのに変わりないが、日が当たると少しポカポカする。

「餡饅、買って?」

 さりげなくコンビニを通り過ぎようと思ったのに。

「太んぞ?」
「うるさいわね、今日まだ何も食べてないのよ。」
「ピザ饅じゃ」
「餡饅がいいのよ!」

 頬を膨らませる。

 これ以上は機嫌を損ねそうだ。

「ははは!分かったから。俺も肉饅買うかな。」
「半分こしたい。」
「お好きにどうぞ?」

 アツアツほくほくの中華饅。

 冷まさないと火傷しそうだ。

「ハムッ…ん〜!おいひい(おいしい)わ。…やっぱり稽古あとの食事は格別ね。いつもより美味しく感じる…」
「そうか、半分こっと。あ…」

 肉饅は半分とは言い難い大きさになってしまった。

「勝ったご褒美、大きい方やるよ。」
ほんほ(ほんと)?!…じゃあ餡饅、大きい方あげるわ。」
「いい。俺、ご飯食ってるし、ご褒美って言ってるだろ?」
「そう…?じゃあ遠慮なく。」

 夜空は元々遠慮なんてなかっただろう、と心の中で言ったのであった。
 
「……あっつ!」