相手は高3女子、歴8年のベテラン。
もう1人は高1女子、歴3年と初心者だ。
夜空は高2女子、歴12年だ。
俺には決着の予想がつかない。
今回は大会では無いので、この道場ならではのルール。
『矢を三本外した人から脱落。』
射る順は年齢順だ、高1の子が1番最初。
弓を構え始めた。
シュッと弓から放たれる矢は的の真ん中少し下を突く。
10射射ったところで的から矢を取る。
2人は皆中を決めている。
「朝日くん、夜空会が長くなったと思わない?」
「どうで」
どうでしょう、と軽く流そうと思っていた。
ただふと前を見た時、夜空は弦をしっかり張ったまま狙いを定めていた。
その矢は的の真ん中を大きな音を立て突いた。
弓が放った振動で揺れている。
「綺麗だ…」
夜空の師匠はクスクスと笑った。
「夜空は変わった。早気とも向き合うようになってここまで強くなった。それは朝日くんのおかげだと思うの。」
記録板を見るよう促されると、両端には3つバツがついていた。
3回外したのだ。
「勝者、黄昏夜空。全35射35中、皆中!」
堂々とした立ち振る舞いに、勝ち誇った顔をしていた。
「どう?」
「すげぇよ、尊敬するわ。」
「じゃ、帰りがけに餡饅買って欲しいわ。着替えてくる。」
「え、おい。ちょ…ったく仕方ねぇな。」
もう既に尻に敷かれていると自覚してしまった。