朝、寒さに目覚めると外は雪が降っていた。

 隣に彼女の姿はない。

 聞くと、訛るからと道場に言ったという。

 吹雪いてはいないが、視界が悪く危なそうだ。

「俺、夜空の迎え行くわ。」
「あらまぁ!じゃあお願いするわ。もう終わると思うから。」
「わかった。行ってきます。」
「気をつけてね!」

 やっと融けてきたと思ったのに、またザクザクと音を立てるようになってしまった。

 吐く息が白く、消える。

「こんちは。」
「はーい。あら、朝日くんよね?夜空のお迎えかな。」
「あ、はい。」

 まだかかるから、と道場の中に入れてもらった。

「夜空!彼氏くんが来てくれたわよ!」
「え!」

 盛大に矢を外す。

「寒かったでしょうに。私のマフラーだけど、手袋もして!」

 夜空は白い道着に藍の袴、背丈ほどありそうな弓を持っていた。

 薄着で見ているだけで寒そうだ。

 体調も心配になる。

「今から試合稽古なのよ。まだかかるけど。」
「んじゃ、観客役だな。その方が緊張感あるし、いいだろ?」

 呆れた、と声が聞こえた、気がした。
 
「その代わり勝てよ?」
「個人戦なのよ、何射皆中すればいい?」
「そうだな…相手の矢が外れるまで、だ。」
「やってやるわ。」