自由にのびのびと成長した子たちは、見事にクラシックにハマった。

 千夜はピアノに精を出し、中学生になる頃にはテレビに出るようにもなった。

 朝未はクラリネットを溺愛し、おかげで留学を視野に入れてきた。

 誰に似たんだか、と笑いたくなる。

 俺らもオーケストラ内でうまくやっていた。

 毎日公演だの、練習だの、移動だの、って忙しいったらありゃしないが、とにかく楽しかった。

 公演終わりの拍手に毎度感動した。

 夜空なんか単独公演を成功させて、今では副団長だ。

 安らぐ彼女の隣が愛おしい。

 あのとき、彼女を救えなかったら、どうなっていただろう。

 あぁ、怖い怖い。

 自分もそうなろうとしていると思うと、怖い反面ちょっと楽しみだ。

 夜空が待ってるとしても、まだ少しなぁなんて…

『いつまで待たせる気なの、もう!』

 美しい声がする。

「急かすな、全く…」

 もし来世があるとするなら、また夜空と出会って、過ごす。

 そして朝日を差すのだ。

 きっと…

 何度でも、


〈ピーピーピーピー…〉

 無機質な機械音が真っ白な病室に響く。

 御老人が亡くなられたのだ。

 奥様には20年も前に先立たれてしまったようで、余生を一人で過ごしたそう。

 世界的チェリスト、「暁朝日」は、享年85歳だった。