「それじゃ、早く帰れるように頑張るわ。」
「ふふ。楽しみにしてるわ。」

 ちなみに真昼はもう既に帰国していて、新人デザイナーとしてバリバリ働いている。

 一星の方の無事大学卒業して、高校の体育教師をしているそう。

 留学して早六年か。

(結婚も考えなくちゃだな…」
「声に出てるわよ。」

 少し顔を赤らめたまま頬を綻ばせた。

 口に出してたとは…恥ずかしい。

「あ、あのだな…その…い、嫌か?」
「ふふふ!朝日となら全然嫌じゃないわ。」

 そうか、と素っ気なく答えた。

 嬉しい反面少し考えてしまう。

 夜空の相手が俺でいいのか、と。

 夜空にはもっと良い相手がいるんじゃないかと、考える時がある。

 きっと夜空なら「朝日がいい」と言ってくれるだろう。

 ただその信頼が余計に俺を不安にする。

 (こめかみ)を搔いた。

「……何を血迷ってるのよ。」
「え……?」
「今更、『俺じゃない方がいい』なんて言わないわよね。」

 肩をビクッとさせた。

 図星ね、と笑う。

「ここまで来て『別れる』の?そんなの嫌ね。」

 夜空は俺の手を握った。

「朝日の隣は誰にも譲らないわ。『朝日がいい』んじゃないの。『朝日じゃないとダメ』なのよ。」

 俺じゃないと……ダメ……か

 誰かに必要とされている。

 その感覚が嬉しかった。

 1度見捨てられた「俺」だから……

「ほんとに俺でいいんだな?」
「はぁ……何度言えばいいのよ。いいわ、一生一緒にいるから。」

 どうやら俺は夜空に勝てそうにない。

「俺と結婚してくれ。」
「えぇ、もちろん。」

 時にして日が昇る頃、熱いキスを交わした。