旅行から帰って一週間で俺はまた空港に来ることになった。

 今日家族が一人旅立つのだ。

「元気でね、夜空。」
「無理するんじゃないぞ。」
「応援してるからね、お姉ちゃん!」

 彼女が日本を離れるのだ。

 明日には俺と真昼が海外に行く。

 一足先にお別れだ。

「夜空、」
「朝日…私頑張るから。次会う時は、もっと素敵な女性になってるわ。」
「!!おぅよ。寂しくなったら、いつでも連絡しろよな。」
「ふふ!!お願いするわ。」

 にこっと笑うと、最後に抱きしめてみた。

 サラサラの髪を撫でてみる。

 黒い絹布に水滴が落ちた。

「全く、朝日ったら。寂しいのはどっちよ。」
「しかた、ねぇだろうが?!」

 一層強く抱きしめる。

 寂しいのは当たり前だ。

 どんな生活が待ってるかも分からない、彼女といつ会えるかも分からないのに…

 何もない訳ない。

「朝日、聞いて?」
「……」
「自分を信じて。朝日はずっと頑張ってたじゃない。自分を信じて、私を信じてくれたように。」

 夜空を信じたように、自分も…

「俺、大丈夫だわ。」
「うん。そうみたいね。」

 空港内にアナウンスが入る。

「そろそろ行かなくちゃね。」
「夜空、」

 呼びかけに振り返る彼女に、不意打ち。

 手を引き、キスする。

「っ////!!!!」
「ごちそうさん。元気でな!!」

 照れ隠しでセカセカと行ってしまったが、足を止めぬまま手を振った。

 次の日の昼、俺もイギリスに飛んだ。