彼女の言葉はまた、涙腺にきた。
「そう…だよな。兄貴は…応援してくれる。」
朝日、と呼んでくれた兄貴の声が思い出される。
「ありがとう、夜空。もう大丈夫だ。」
「それは良かったわ。」
優しく抱きしめてみる。
懐かしさを噛み締めて、微笑んだ。
『朝日なら大丈夫。きっとできるよ。』
「朝日なら大丈夫よ。きっとできるわ。」
支えられっぱなしも癪だ。
「俺も支えられるようにならないとな。」
「ふふ、声に出てるわよ。」
「ヤバっ…!」
「ふふふ!」
笑顔が増えた彼女はなお可愛い。
抱きしめたまま寝転んだ。
「二度寝?」
「どうせ休みだしな。」
休みらしい休みじゃあないが、仕方ない。
「留学前に旅行したいな。」
「いいわね。先輩は?」
「都合が合えば。真昼喜ぶだろうしな。」
留学してしまえば、次いつ会えるか分からない。
そんなとこを考えていると、急に腹が鳴った。
「ふふ!お腹すいたのね。」
「おい、笑うな!」
「ごめんなさいね、ふふ!」
「あのな…」
ちょっと待ってて、と言われると彼女は部屋を出た。
トントンと規則的なリズムのあと、持ってきたのはキウイ。
「それさ…」
「えぇ、お義父さんのよ」
ですよね、と分かっていながら持ってくる彼女に呆れた。
「あら、マスカットがよかったかしら?」
「だ、大丈夫…」
父はマスカットが好きだから…食べ物の恨みは深い。
「そう、せっかくなら食べてしまおうと思ったのに。」
「夜空って確信犯だよな。」
「それが何か?」
自覚しているようで何よりだ。
あぁ、今更自覚したが、悪夢なんかよりも夜空のほうがよっぽど怖い。
何しでかすか分からないし、何言っても真実に聞こえる。
怒らせたらこの世の終わりだ。
「怒らせないようにしよ…」
「誰を?」
「い、いや、何でもない…」
もう尻に敷かれてるな、これ。