それはたとえ冬が近づこうと。

「…ひ!……さひ!朝日ってば!もう!」
「!!!夜空…!ごめん、何?」
「もう、今日はハロウィンなのに勉強してるの?息抜きは大切よ?」
「分かってるけども…っ!」

 じゃあ来て、と半ば無理やり机から引き剥がされた。

 なんとなく分かっていた気がする。

 数分後には、大きな耳とフサフサの尻尾がついているではないか。

 狼男の仮装である。

「朝日似合ってるわ〜!」
「マジそれな!朝日可愛いよ〜!」
「うっせ!」

 絶対李月と真昼が選んだのだと確信した。

 でも案外楽しんでる自分もいた。

 ずっと根を詰めていたらしい。

 家族みんなが仮装をしているのが、新鮮でかつ似合っていた。

 父は猟師、前開きのシャツに銃を構えていた。

 母はおばあさんのコスプレなのだろうけれど、シワというシワがないのでメイドのように見える。

 双子は揃って赤ずきんだが、少し違う。

 真昼は通常の赤ずきん、焦げ茶色のウェイブの髪によくあっている。

 一方夜空は闇落ち赤ずきん、ならぬ青ずきん。

 黒髪と青いマントがベストマッチしている。

 可愛い、可愛すぎる…

「朝日、お姉ちゃんガン見じゃん。キモっ…」
「お前…当たり強くなったよな。ほんと」
「なんで嫌いなのに優しくしなきゃいけないわけ?」
「まあまあ、落ち着いて。」
「お姉ちゃん「夜空」が言うなら…」

 まあ、一番優しかったのは夜空だったが。

「というか、私一星とデートだから。バイバイ。」
「遅くならないようにね。」
「はーい、わかったよ。お姉ちゃん。」

 姉には従順な妹だこと。

「はあ。」
 両親はパーティーの準備を始めたようだ。

「俺、何も用意してなかったわ…すまねぇ」
「ふふ、いいわ。朝日のことだしそうなんだろうな、って思ってたわ。」
「うう…」

 申し訳ないが、それすら楽しんでる彼女に嫉妬した。

 せっかくの休息なのだ、俺だって楽しみたい。

 そうだ…

「ちょっと部屋来ね?」
「?いいけれど…」