「そんなことを気にしていたの?」
「えっ……」
「朝日は本当に心配性なのね。」

 ふふ、と笑みを零すと、俺は左手に違和感を覚えた。

 彼女の手が解かれるとサファイア色をクリスタルがキラキラと光ってる。

「これって……俺、合格しなかったのに…」
「嫌いな英語をあんなに頑張って、朝日ってほんとに凄いわ。それに私あのテスト1回で受かるとなんて思ってないもの。」

 でもこんな点数取ってくるなんて、と驚く夜空。
 
「これは頑張ったご褒美よ。これだけでも私はすごく嬉しいわ。だから、泣かないで?」

 そんなこと言われて泣くな、不可能だ。

「ありがとう…、夜空…!ありがとう…!」
「きゃっ!もう朝日ったら…」

 夜空の細い体を抱きしめた。

 あぁ、温かい…

 俺はそのまま家族に不合格だったことを言った。

 事の経緯を初めて口にした。

 始めこそ皆黙ったままだったが、1拍置いて温かい言葉が耳に入った。

「気にするな、朝日。これで終わったわけじゃないんだがら。」
「よく頑張ったじゃないの!お母さん嬉しいわ!」
「私、この点数は無理だよ…凄すぎ…」

 父と母は頭を撫でてくれて、優しく抱きしめてくれた。

 誰かに背から抱きしめられた感覚もあった。

 目が赤くなって腫れるほど、泣いた。

「ねぇ、朝日…?」
「ま、真昼?どうしたんだよ?」
「私…自分たちばかり辛い思いしてきたんだって思ってた…ごめんなさい…」

 朝日もだったんだね、と付け足されたから、首を横に振った。

「確かに辛かった…けど、もう大丈夫そうなんだわ。」

 大丈夫になったのだ、もう折れたりしない。

「そっか…ま、嫌いなのは変わらないけど。」
「なんだよ、ったく。」

 お姉ちゃんと一緒にいる限りずっと嫌い、と言われたので、一生仲良くなれないようだ。


 結果どうあれ、俺が英語を勉強しなきゃいけないのは変わらない。

 先生になんと言われようと俺は留学すると決めたのだ。