「朝日はどうだ?」
「冷や汗と涙が止まりそうにないわ。ずっと『ごめんなさい』『捨てないで』を繰り返してる。」
「もしかしたら…トラウマを…」
陽翔には心当たりがあるようだが、あえて聞かないでおこう。
夜、悪夢によって飛び起きた。
時刻は午後7時半、ベッドは汗と涙でぐちゃぐちゃだった。
何故か隣には夜空が寝ていた。
左手は彼女の手に包まれていた。
それだけなのに、とてもじゃないけど心が温まる気がした。
「夜空…」
「ぅうん…?あさひ…?」
「!!ご、ごめん。起こしたか?」
「ううん、大丈夫よ。朝日こそ、まだ顔が青いわ。寝てた方がいいんじゃないかしら?」
「大丈夫だ。」
もし結果を言ったら、夜空に嫌われるだろうか…?
きっとそんな事しない、受け入れてくれるはず、と思っている自分がいる。
反面嫌われたらどうしよう、という自分がいるのも確かだ。
嫌われたくない、ずっとに一緒にいたい、そんな思いが錨となって引っかかっている。
でも、言わなくちゃ…
「あ、あの、な、その、その、だな、あの、」
こんなに言葉詰まったことはない。
「あ、あ、の、!」
嫌気のあまり涙が出てくる。
「朝日…ゆっくりでいいわ。終わるまで離れないから、安心して?」
優しい温もりを感じた、自然と震えが止まった。
「お、俺…この前のテスト、落ちたんだ…不合格だった…」
黙ったままだった。
「先生に『留学はあきらめろ』って言われて、悔しい反面申し訳なくて…」
1つ言葉に出すと止まらない、嗚咽混じりの声で全てを伝えた。
「せっかくあんなに対策もしてくれて、励ましてくれたのに……俺、怖くて…また『家族じゃない』って言われるのが、怖くて…あの人の声がずっと頭の中でリピートされて、同じことを言われるんじゃ、って…!」
「うんうん。うふふ、朝日は心配性なのね。」
彼女は俺を罵るようなことはしなかった。
寧ろ笑ってくれたのだ。