『朝日が弟?この程度できないなんて馬鹿にも程があるわ。別れましょ。』
『弟が出来損ないなんてヤダヤダ。だから嫌いなんだって。』
『せっかく賛成してあげたのに、全て踏みにじるのね。残念でならない。』

 そんなはずない、きっとそんなこと言わないでくれる。
 
 くれる…って信じてる…

『一家の恥め。お前が俺の子だなんて信じられないな。もう、父さんだなんて呼ぶな!』

「ヒュっ…!」

 し、ん、じ、て、る、、

 心臓が変にバクバクしている。

 上手く息が出来ない。

 吸っても吸っても酸素が足らない。

 椅子から前屈みに倒れた。

「おい!朝日!しっかり息しろ!」
「ヒュっ、ヒュっ!」
「吐くのを意識しろ!ゆっくり、そうゆっくりだ。」

 口元にハンカチがくる。

 言われた通りにゆっくり、吐くのを意識して呼吸する。

「も…大丈夫です…すんません…」
「そ、そうか。今日はもう帰れ。進路はゆっくり考えればいい。急がば回れ、だ」
「はい…」

 職員室を後にしても、激しい鼓動が続いていた。

 帰路を辿るも、足に鉛が付いてるかのように重く、いつもは30分のところを1時間かけてしまった。

 空に青はなくただ重苦しいグレーが全てを占めていた。

「ただいま…」
「おかえりなさい、朝日。遅かったじゃない、居間にお菓子あるわよ。」
 
 まだ10月、だいぶ涼しい季節になったが加えて冷や汗が止まらず寒気までした。

「嘘…ゲリラ豪雨…!洗濯込まないと…」

 気持ちが悪い…腹の底からムカムカして仕方がない。

「気持ち悪っ、ゲボっ…!うっ、おぇぇ!」
「??、!朝日!大丈夫なの!しっかりして!」

 我慢できず血が混じってるような吐瀉物を吐き出した。

 夜空があまりに大きな声で言うものだから、ぞろぞろと居間やキッチンから出てくるでは無いか。

 自然と涙か頬を伝う。

「ごめ、な、さい、ごめんなさい…!捨て、ないで…!1人にしないで…!」
「!?大丈夫よ。まだ出るかしら?うがいしましょう。」

 フラフラと立ち上がる、父の支えを頼りに洗面所でうがい、着替えを済ませた。

 自室を戻るとすぐ意識を飛ばした。