「夜空…机の横の引き出し、1番下開けてみてくれ。」
「ここ?…っ!これっ…!」
「プレゼント。大会お疲れ様と優勝おめでとうの、俺からプレゼント。開けてみてくれ。」
「えぇ。」

 中には小さい箱、本当は俺が開けられてら良かったんだけど。

「っ……綺麗な、指輪ね…」

 ガーネット色の石、あくまで偽ではあるがはめ込まれている。

 高見えって言うだけで物はそんなに高くない。

 彼女の白い手に赤い石がよく映える。

 自然と左の薬指にはめた。

「これじゃあ朝日のがないわ。」
「俺はいい…プレゼントだし、夜空が喜んでくれたらそれで」
「ダメよ。そうね…私も何がご褒美としてあげたいわ。じゃあ…」

 絶対ろくな事じゃない、と先読みしてみた。

「今度の英語の公式テスト準1級合格したらあげるわ。」
「うぇっ…まじかよ…」

 結構まともな事だった。

 そして大事なやつ。

 これがないと学校的に留学を勧められない、らしい。

「頑張る…」
「もう十分頑張ってるわ。今の朝日ならきっとできるわ。」
「……ありが、とう。」

 また、眠く……

 うつらうつらしているとひんやりしたものが触れる、夜空の手だ。

「おやすみ、朝日…」

 後、(くち)に何か柔らかいものが触れたのを最後に意識を手放した。

 その2週間後そのテストがあった。

 かなり自信を持って挑めたと思っている。

 それも夜空のおかげだ。

 筆記もリスニングもバッチリ、ワンツーマンで彼女とスピーキングの練習もした。

 少しばかり緊張はしたが、大丈夫だ。

「朝日!結果出てるぞ!!取りに来い!」
「あ、はい!」

 結果が帰ってきたのはそれから1ヶ月後のことだった。

 職員室に取りに行くと、椅子にすわらされた。

「どんまい、あと少しだったな。」
「…そんな、えっ…」

 結果はまさかの不合格、あんなに自信があったのに…

 スピーキングの点数が少し足らなかった、それだけだった。

「留学は諦めた方がいいかもな。ま、朝日が決めるのは違いないが。」
「あ…」

 皆になんて言おうか、頭の中をぐるぐると駆け回った。

 言わない?いや、それはダメだ。

 どうにかしないと…両親にも、2人にも、迷惑だ。