俺は知っていた、夜空が未だに古いYのキーホルダーをつけていることを。

 それは明日香と薫子の2人とお揃いで買った物だった。

 もう結構年季が入っているものだが、いつまで経っても変えようとしなかった。

 それは薫子と仲違いしても。

「夜空、まだ薫子のこと…なんで?薫子が、夜空に何したか分かってる?」
「明日香…勿論分かってるわ。でも、私だけは薫子の親友でいたかったのよ。相手がそう思ってなくても…我儘でしょう?」

 お人好しに程があるな。

 薫子は立ち尽くしていた。

 土の色が濃くなる。

「薫子…こんな私でごめんなさい。でも、私は友達でいたかった…」
「……最低…」

 彼女も何かありそうだな。

 面倒なやつが多すぎる…

 自然とため息が出た。

「私がどんな思いであんなこと言ったか分からないくせに!…私だって…あんなこと言いたくなかったぁ…」
「「えっ……」」
「親に言われたの!友達をやめろって!2人といたら、私がダメになるからって…」

 背筋がゾッとした。

 ここまでとは思っていなかった。

 友達まで決める親がいるのか…

 モンスターペアレントっていうのはこうゆうやつのことなのだろうか。

「親は…私を1番にしたがってる。別に私はそんなことないのに。ごめんなさい、で済まないのは分かってる…でも、ごめんなさい…」

 俺は今更何言おうとこいつは嫌いだ。
 
「そう、だったんだ…ごめん、私は……多分信用はできないわ…」
「明日香…それもそうよ、分かってるから…大丈夫…」

 それは明日香も同じ。

 でも、お人好しは違かった。

「許しはできないわ…たとえ親のせいでも…」
「あっ…そうよね…」
「でも、私はずっと親友だと思ってたって言ったでしょう?また、やり直せばいいのよ。」
「お人好しすぎるって、夜空。わかってる?」

 分かってるわ、と一言、崩れた薫子に手を差し伸べた。