リアは肩を揺り動かされてはっとして顔をあげた。
リンクが心配そうに顔を覗き込んでいることに気づき、慌てて涙でこわばった頬を手でこすった。
「少し横になったほうがいいよ」
ためらいがちに言うリンクの言葉にリアは小刻みにうなずいた。
アシュアの眠る横でずっと彼の手を握っているせいか、不自然な姿勢でのうたたねで肩が痛い。
顔をしかめて首を動かそうとしたとき、冷たい空気を吸い込んで咳き込んだ。
ここ、どこだっただろう。大陸だったはずだけど、北極圏に近いとリンクは言っていた。
どうしてこんな寒いところにコミュニティを構えているんだろう……。
回らない頭でリアはぼんやり考えた。
「寝床を…… アシュアの横に作ってあげようか。テントももっと暖めようね」
リンクの言葉に思わず涙が出そうになった。
「……うん」
そう答えるのがやっとだった。リンクはリアの肩に手を置くと、テントを出ていった。
リンクだって辛くてしかたがないだろう。リア以外でいつもトリのそばにいたのはリンクだった。
ごめんね、リンク。
リアは心の中で詫びた。
わたしがしゃんとしていないから、リンクは泣けない。ほんとうにごめんなさい、リンク。
アシュアを連れて戻ったリアを待っていたのは、叩きのめされるようなことばかりだった。
トリの死に顔はきっと一生忘れられないだろう。
いつも一緒にいたのに。ずっと一緒に大人になっていくんだって思ってたのに。
どうしてこんなことしたの。
あたし、トリの命とアシュアの命を天秤にかけたことなんかないわ。
言ってくれれば…… 言ってくれれば……。
リアは顔を歪めた。
そうよ…… あたしなんかでどうにかなるわけがない……。何もできなかった。
ケイナとセレスはどうするの、と船に乗り込む前に喚き散らした。
見捨てて行くの? どうしてそんなことするの!
力づくで船に押し込まれ、どんどん小さくなっていく森を見ながら船のドアを叩き続けた。
こぶしの皮膚が破れてやっと力つきた。
ケイナ、セレス、ごめんなさい。生きててお願い。また会えるよね……。
アシュアは自律呼吸し、脈拍も落ち着いている。
地球のエリドのコミュニティと合流してすぐにきちんと処置をした。
それでもアシュアは目覚めない。
本当なら、とても生きてはいられない傷だと言われた。
日に焼けたような肌も、燃えるような赤い髪も、高い鼻も、少し笑っているような口元も、 前と全く変わらないのに、その目だけは堅く閉じたままで開かない。
アシュアの名を呼び続けろ……。トリは最期にそう言い残した。
トリ、これがあなたの能力の精一杯。
切なくてたまらなくなる。
トリの力は万能ではない。死を自分が担うことはできても、それ以上は無理だった。
トリが知っているなんて思いもしなかった。アシュアと肌を合わせたのは一回きりだったのに。
もし、子供ができていても、自覚するのはずっと先。
ほんとうにいるの? あたしの中に小さな命が。
だからアシュアを助けてくれたの? トリ。教えて。
(いるよ。命は続くから)
トリの声が聞こえたような気がした。
「アシュア」
リアは小さな声で呼んだ。
「アシュア、帰って来て。目が覚めたら、ケイナとセレスを助けに行こう。みんなで『ノマド』で暮らそう。ふたりともあんたのこと待ってるよ。あたしも待ってるのよ。アシュア、あたしの声、聞こえる? 目を覚まして」
この手は血が通ってる。温かい。かならずいつかわたしの手を握り返してくれる……。
リアはアシュアの手にくちびるを押しつけた。
アシュアの口がほんのわずか動いたことに、リアは気づかなかった。
「…… リ……」
その口はそう言っているようだった。
「なんで接続できないんだ……」
カインはつぶやいた。
ブレスレットに刻まれたパスワードから『ホライズン』で堂々と接続してやろうと思っていたが、馬面バッカードの顔を見ることを考えると吐き気がしたので、アルと別れてからすぐに自室に戻ってコンタクトを試みた。
しかし、ケイナのときにはすぐに見えた立方体のファイルに入らない。
画面に見えるのは意味不明の文字の羅列だった。延々とそれが画面の下から上へスクロールしていく。いったい何なのだろう、これは……。
「『ホライズン』が外部コンタクトを察知してガードしたのかな……」
それにしても変だった。
少なくとも『リィ・カンパニー』の塔の自分の自室からのコンタクトはノーチェックのはずだ。
まるで気が狂ったように下から上へ走って行く文字をカインは呆然として見つめた。こんなガードは聞いたことがない。
結局、『ホライズン』に行くしかないということか。
イラついてデスクの上をはたいたとき、これまで見ていた資料の紙束がばらばらと床に落ちた。
カインは舌打ちをして身をかがめるとデスクの下に散らばった紙に手を伸ばし、そしてぎょっとして身を凍りつかせた。
動作をとめたまま、自分の目が捉えたものをしっかり見極めようと顔だけを動かした。
デスクの下から向こうに、足が見える。
痩せ細った素足。まっすぐに突っ立ったような足はじっと身動きせずこちらを見ていた。
体中の血管が一気に収縮したように思え、頭の中が真っ白になった。
自分の部屋に靴もはかずに素足のままで突っ立っている者がいる。それだけで充分な恐怖だった。
カインはごくりと唾を飲み込むと、ゆっくりとデスクの下から立ち上がった。そして部屋を見回した。
誰もいない。足のあった場所には誰も立っていなかった。
再びデスクの下を覗き込んだが、やはりもう何も見えなかった。
「いったい、何なんだ……」
かすれた声でつぶやいた。
幽霊のたぐいは信じない主義だ。だとしたら、飛ばされた意識か、予見か。
それにしても、この恐怖感はなんだろう。異様に背筋が寒くなる。
骨の浮き出た足はおとなのものではなかった。もちろん、男のものでもない。少女だ。
「『グリーン・アイズ』……?」
カインは目の前のモニターに目をやった。相変わらず文字がものすごい勢いで走っている。
『ノマド』では回り道をしたけれど『ホライズン』そのものに接続できないことはなかった。
今は『ホライズン』に行くことさえできない。じゃあ、いったい今どこに繋がっているんだろう。
見るともなしに眺めていて、カインは妙なことに気づいた。
画面の一点に定期的に同じ文字が必ず同じ位置をスクロールしていく。
「7……2……4……0……K……a……l……a……a……l……l……i……t……N……u……n……a……a……t……」
つぶやいて頭を抱えた。何の事かさっぱり分からない。
ただ、自分が無理矢理何かの法則を見ようとしているだけかもしれない。
コンピューターが壊れたのかな……。しばらく使っていなかったし。
その可能性はあった。
まだ背筋がゾクゾクする。後ろの窓に目をやると、もう日が暮れかかっていた。
天井から床まで壁一面がガラス貼りになっているが、外から中はきっと見えていないはずだ。子供の頃はこの窓から下を見下ろすと、そのままガラスを突き破って外に飛び出しそうで怖かった。
赤い夕陽が高いビルを照らしている。地球だから分かる。太陽の光が赤いこと。
ケイナもどこかでこの光を見ているのだろうか……。
かなり長い間、ぼんやりと外を見ていたような気がした。
そしてふと気がついた。
外が暗くなったために、部屋の中が窓に映り込んでいた。映っていたのはさっき見つめていたモニターだった。
光るモニターは平常を取り戻していた。
元に戻ったのか……。そう思って振り向いて、身をこわばらせた。相変わらず、画面は激しい勢いで文字をスクロールさせていた。
「なんで……?」
再び窓に目を向けた。
違う。窓に映るモニターと、実際に目で見るモニターが違う……。
息が詰まりかけた。
違うぞ、これは、何かに繋がってるわけじゃない。現実のどこかに接続しているんじゃない。これは、ぼくの目だけが捉えている架空の画面だ……。こんなばかなことが……。
素足の気配が頭の中で甦る。まだここにいる。あの足はこの部屋にいる。誰だ、おまえは。
カインは手を伸ばしてモニターを消そうとした。しかし、キイを叩いても何をしても走る文字は消えなかった。
小さなうめき声をあげて後ずさると、カインは部屋を飛び出した。
走っていった先はリィの情報管理室だった。
「K、a、l、a、a、l、l、i、t、 N、u、n、a、a、t!」
カインは近くにいた女性を捕まえると怒鳴った。
「は?」
女性が驚いたようにカインを見た。カインは手早く彼女のそばの紙に字を書き殴った。
「“Kalaallit Nunaat”! どういう意味か調べてください!」
女性は困惑したような顔で近くの男に顔を向けた。カインが2日前に調査依頼をした男だ。男がうなずいたので、彼女はキイを叩いた。しばらくして、女性は口を開いた。
「Kalaallit Nunaat、人の島、という意味です。北緯72度、西経40度、かつて、グリーンランドと言われた島の先住民族イヌイットの言葉で、この島の呼び名です」
「北緯72度、西経40度……」
カインはつぶやいた。なんでこんな場所を呼びかける……?
記憶の彼方に追いやられた何かが見えようとしていた。白い……
トリが消した。そうだ、思い出した。
トリが消した。最後の予見。これがラストシーンだからだと。
目をこらそうとしたとき、男の声がカインの記憶を再び闇に追い返した。
「一日早いですが、情報が揃いました。ご覧になりますか?」
カインは男に顔を向けた。男は分厚い紙束を持っていた。
「旅客機事故の詳細と、乗客の身元調査です。データもそちらにお送りいたしました」
カインは息を吐くと、うなずいてそれを受け取った。
リンクが心配そうに顔を覗き込んでいることに気づき、慌てて涙でこわばった頬を手でこすった。
「少し横になったほうがいいよ」
ためらいがちに言うリンクの言葉にリアは小刻みにうなずいた。
アシュアの眠る横でずっと彼の手を握っているせいか、不自然な姿勢でのうたたねで肩が痛い。
顔をしかめて首を動かそうとしたとき、冷たい空気を吸い込んで咳き込んだ。
ここ、どこだっただろう。大陸だったはずだけど、北極圏に近いとリンクは言っていた。
どうしてこんな寒いところにコミュニティを構えているんだろう……。
回らない頭でリアはぼんやり考えた。
「寝床を…… アシュアの横に作ってあげようか。テントももっと暖めようね」
リンクの言葉に思わず涙が出そうになった。
「……うん」
そう答えるのがやっとだった。リンクはリアの肩に手を置くと、テントを出ていった。
リンクだって辛くてしかたがないだろう。リア以外でいつもトリのそばにいたのはリンクだった。
ごめんね、リンク。
リアは心の中で詫びた。
わたしがしゃんとしていないから、リンクは泣けない。ほんとうにごめんなさい、リンク。
アシュアを連れて戻ったリアを待っていたのは、叩きのめされるようなことばかりだった。
トリの死に顔はきっと一生忘れられないだろう。
いつも一緒にいたのに。ずっと一緒に大人になっていくんだって思ってたのに。
どうしてこんなことしたの。
あたし、トリの命とアシュアの命を天秤にかけたことなんかないわ。
言ってくれれば…… 言ってくれれば……。
リアは顔を歪めた。
そうよ…… あたしなんかでどうにかなるわけがない……。何もできなかった。
ケイナとセレスはどうするの、と船に乗り込む前に喚き散らした。
見捨てて行くの? どうしてそんなことするの!
力づくで船に押し込まれ、どんどん小さくなっていく森を見ながら船のドアを叩き続けた。
こぶしの皮膚が破れてやっと力つきた。
ケイナ、セレス、ごめんなさい。生きててお願い。また会えるよね……。
アシュアは自律呼吸し、脈拍も落ち着いている。
地球のエリドのコミュニティと合流してすぐにきちんと処置をした。
それでもアシュアは目覚めない。
本当なら、とても生きてはいられない傷だと言われた。
日に焼けたような肌も、燃えるような赤い髪も、高い鼻も、少し笑っているような口元も、 前と全く変わらないのに、その目だけは堅く閉じたままで開かない。
アシュアの名を呼び続けろ……。トリは最期にそう言い残した。
トリ、これがあなたの能力の精一杯。
切なくてたまらなくなる。
トリの力は万能ではない。死を自分が担うことはできても、それ以上は無理だった。
トリが知っているなんて思いもしなかった。アシュアと肌を合わせたのは一回きりだったのに。
もし、子供ができていても、自覚するのはずっと先。
ほんとうにいるの? あたしの中に小さな命が。
だからアシュアを助けてくれたの? トリ。教えて。
(いるよ。命は続くから)
トリの声が聞こえたような気がした。
「アシュア」
リアは小さな声で呼んだ。
「アシュア、帰って来て。目が覚めたら、ケイナとセレスを助けに行こう。みんなで『ノマド』で暮らそう。ふたりともあんたのこと待ってるよ。あたしも待ってるのよ。アシュア、あたしの声、聞こえる? 目を覚まして」
この手は血が通ってる。温かい。かならずいつかわたしの手を握り返してくれる……。
リアはアシュアの手にくちびるを押しつけた。
アシュアの口がほんのわずか動いたことに、リアは気づかなかった。
「…… リ……」
その口はそう言っているようだった。
「なんで接続できないんだ……」
カインはつぶやいた。
ブレスレットに刻まれたパスワードから『ホライズン』で堂々と接続してやろうと思っていたが、馬面バッカードの顔を見ることを考えると吐き気がしたので、アルと別れてからすぐに自室に戻ってコンタクトを試みた。
しかし、ケイナのときにはすぐに見えた立方体のファイルに入らない。
画面に見えるのは意味不明の文字の羅列だった。延々とそれが画面の下から上へスクロールしていく。いったい何なのだろう、これは……。
「『ホライズン』が外部コンタクトを察知してガードしたのかな……」
それにしても変だった。
少なくとも『リィ・カンパニー』の塔の自分の自室からのコンタクトはノーチェックのはずだ。
まるで気が狂ったように下から上へ走って行く文字をカインは呆然として見つめた。こんなガードは聞いたことがない。
結局、『ホライズン』に行くしかないということか。
イラついてデスクの上をはたいたとき、これまで見ていた資料の紙束がばらばらと床に落ちた。
カインは舌打ちをして身をかがめるとデスクの下に散らばった紙に手を伸ばし、そしてぎょっとして身を凍りつかせた。
動作をとめたまま、自分の目が捉えたものをしっかり見極めようと顔だけを動かした。
デスクの下から向こうに、足が見える。
痩せ細った素足。まっすぐに突っ立ったような足はじっと身動きせずこちらを見ていた。
体中の血管が一気に収縮したように思え、頭の中が真っ白になった。
自分の部屋に靴もはかずに素足のままで突っ立っている者がいる。それだけで充分な恐怖だった。
カインはごくりと唾を飲み込むと、ゆっくりとデスクの下から立ち上がった。そして部屋を見回した。
誰もいない。足のあった場所には誰も立っていなかった。
再びデスクの下を覗き込んだが、やはりもう何も見えなかった。
「いったい、何なんだ……」
かすれた声でつぶやいた。
幽霊のたぐいは信じない主義だ。だとしたら、飛ばされた意識か、予見か。
それにしても、この恐怖感はなんだろう。異様に背筋が寒くなる。
骨の浮き出た足はおとなのものではなかった。もちろん、男のものでもない。少女だ。
「『グリーン・アイズ』……?」
カインは目の前のモニターに目をやった。相変わらず文字がものすごい勢いで走っている。
『ノマド』では回り道をしたけれど『ホライズン』そのものに接続できないことはなかった。
今は『ホライズン』に行くことさえできない。じゃあ、いったい今どこに繋がっているんだろう。
見るともなしに眺めていて、カインは妙なことに気づいた。
画面の一点に定期的に同じ文字が必ず同じ位置をスクロールしていく。
「7……2……4……0……K……a……l……a……a……l……l……i……t……N……u……n……a……a……t……」
つぶやいて頭を抱えた。何の事かさっぱり分からない。
ただ、自分が無理矢理何かの法則を見ようとしているだけかもしれない。
コンピューターが壊れたのかな……。しばらく使っていなかったし。
その可能性はあった。
まだ背筋がゾクゾクする。後ろの窓に目をやると、もう日が暮れかかっていた。
天井から床まで壁一面がガラス貼りになっているが、外から中はきっと見えていないはずだ。子供の頃はこの窓から下を見下ろすと、そのままガラスを突き破って外に飛び出しそうで怖かった。
赤い夕陽が高いビルを照らしている。地球だから分かる。太陽の光が赤いこと。
ケイナもどこかでこの光を見ているのだろうか……。
かなり長い間、ぼんやりと外を見ていたような気がした。
そしてふと気がついた。
外が暗くなったために、部屋の中が窓に映り込んでいた。映っていたのはさっき見つめていたモニターだった。
光るモニターは平常を取り戻していた。
元に戻ったのか……。そう思って振り向いて、身をこわばらせた。相変わらず、画面は激しい勢いで文字をスクロールさせていた。
「なんで……?」
再び窓に目を向けた。
違う。窓に映るモニターと、実際に目で見るモニターが違う……。
息が詰まりかけた。
違うぞ、これは、何かに繋がってるわけじゃない。現実のどこかに接続しているんじゃない。これは、ぼくの目だけが捉えている架空の画面だ……。こんなばかなことが……。
素足の気配が頭の中で甦る。まだここにいる。あの足はこの部屋にいる。誰だ、おまえは。
カインは手を伸ばしてモニターを消そうとした。しかし、キイを叩いても何をしても走る文字は消えなかった。
小さなうめき声をあげて後ずさると、カインは部屋を飛び出した。
走っていった先はリィの情報管理室だった。
「K、a、l、a、a、l、l、i、t、 N、u、n、a、a、t!」
カインは近くにいた女性を捕まえると怒鳴った。
「は?」
女性が驚いたようにカインを見た。カインは手早く彼女のそばの紙に字を書き殴った。
「“Kalaallit Nunaat”! どういう意味か調べてください!」
女性は困惑したような顔で近くの男に顔を向けた。カインが2日前に調査依頼をした男だ。男がうなずいたので、彼女はキイを叩いた。しばらくして、女性は口を開いた。
「Kalaallit Nunaat、人の島、という意味です。北緯72度、西経40度、かつて、グリーンランドと言われた島の先住民族イヌイットの言葉で、この島の呼び名です」
「北緯72度、西経40度……」
カインはつぶやいた。なんでこんな場所を呼びかける……?
記憶の彼方に追いやられた何かが見えようとしていた。白い……
トリが消した。そうだ、思い出した。
トリが消した。最後の予見。これがラストシーンだからだと。
目をこらそうとしたとき、男の声がカインの記憶を再び闇に追い返した。
「一日早いですが、情報が揃いました。ご覧になりますか?」
カインは男に顔を向けた。男は分厚い紙束を持っていた。
「旅客機事故の詳細と、乗客の身元調査です。データもそちらにお送りいたしました」
カインは息を吐くと、うなずいてそれを受け取った。