妖界のとある場所。
常に夜の世界である筈の場所。
しかし、その場所は燦燦と日光が降り注いでいる。
特殊な場所の一角。
一人の少女が立ち上がる。

「この気配」

むくりと立ち上がった少女は全身が白い。
白い着物を纏い、短い髪も透き通るように白かった。
何より目立つのは腰の部分から伸びる七本の尾。

「誰かいるか?」
「はい」

スタッと彼女の傍に一人の妖怪が現れる。
腰の部分からゆらゆらと揺れる二つの尾。
彼らは狐の妖怪。
特殊な力を持ち、他の妖怪達よりも強力な神通力を有する。

「何用でしょうか?」
「今から言う方角へ探りを入れよ」
「それは、もしや!?」

顔を上げる狐の妖怪に彼女は微笑む。

「あぁ、奴を感じた」
「では!」
「そうだ、感じた方角に奴がいる」
「わかりました。必ず、彼を見つけて御覧に入れます」

姿を消す狐妖怪の姿を見送ってから彼女は口から鋭い牙を覗かせる。

「十五年か、長いようで短かった。だが、お前は絶対に逃がさないぞ」

舌なめずりをしながら彼女は微笑む。