「あ?」
「柳生さんから聞いた……誕生日が近づくと霊力が強くなるって」

僕の言葉に新城が頭をかきむしる。

「柳生さんめ……別に気にすることはねぇよ」

新城はそういうけれど、霊力が強くなると狙われる事が多いという。
そんな状況下で来てくれた新城に感謝の気持ちよりも申し訳なさの方が勝って。

「僕は無力だ」
「いきなりなんだ?気持ち悪い」

帰り道にぽつりと漏らした言葉に新城は反応する。

「今回の件、新城の代理でいったのに、何もできなかった。それどころか三衣ちゃんを助けられなかった」

覚悟していたけれど、三衣ちゃんは吸血樹の餌食になっていた。

「……」
「新城だったら簡単に解決していたかも、三衣ちゃんが犠牲になる事も」
「たらればの話をすんな」

尻に痛みが走る。
振り返ると新城が蹴りを繰り出した状態で僕を睨む。

「怪異というのは予期せぬ時に起こる。どれだけのベテランと言われるような祓い屋だとしても、最初は初心者だ。お前もまだペーペーの域を出ていない。ひたすら経験を積め、後悔や色々な悩みはその後に考えろ」

新城なりの励ましの言葉に僕は自然と頷いた。

「新城は後悔とか、そういうものある?」
「沢山ある。そして、いつかは向き合わないといけないものも」
「……そっか」

セミの鳴き声が聞こえる中、僕は呟いた。

「強くなりたいな」
「安心しろ」

呟きが聞こえたのか新城が僕を見る。

「お前は強くなる」

そういって新城は歩みを止めた。

「何より、お前の優しさが俺をあの屋敷へ呼び寄せたんだ」
「え?」
「彼女の魂が俺のところへやってきた。お前と俺のつながりを見つけてきたという」
「それは……」
「彼女の助けて欲しいという願いを聞いて、俺は来た」