「結論から言えば、あの屋敷は誰も入れずに封印するか、遺言とやらにある焼却しか手段はない」

屋敷から脱出して数日後。
新城の通報を受けた長谷川さん達が不思議思議館へ突入。
特別な術式を用意して挑んだらしいが、結果は散々なものだったという。
内容を聞いた新城は長谷川さんに伝えると彼はがっくりと項垂れる。
後、最後の煙はただの煙でフェイクだったらしい。

「一応、拉致監禁やらもあるからな。志我一衣について指名手配する」

喫茶店で話す僕と新城、長谷川さん。

「志我一夏だけど、ミイラの死体が屋敷の中で発見された。一カ月以上前に吸血樹の餌食になっていたんだろうな」
「え!?じゃあ」
「雲川達が呼び出された時は既に死んでいたって事だな」
「用意周到、計画的な女って事だな。志我一衣は」

長谷川さんの言葉に僕は俯く。
最初から彼女の術中にはまっていたという事か。

「それにしても、驚いたぞ。外国の吸血樹がこの国に持ち込まれていたなんて、上は大慌てだったんだからな」
「興味ねぇな。国の管理が悪いのはいつものことだ」
「痛いところつくねぇ……!」
「ねぇ、新城。吸血樹って、何なの?」
「あー、バタバタしていて話していなかったな」

――吸血樹。

海外に存在する怪異である吸血鬼が死んで地面に埋葬された際に生まれる特殊な樹であり、人の血を吸収することで力を増していく。
やがて、一定数を得た吸血樹は意思を持ち、ある能力を持つようになる。
人を別の種族へ変異させる力。

「血を吸わせれば吸わせる程、吸血樹の力は増す。実物を見た限り、あれはヤバイ。封印することはできたからな。ほらよ」

匣を机に置く。
受け取った長谷川さんはジュラルミンケースの中に匣を入れる。

「あぁ、そうだ。志我二衣については?」
「しばらくは俺達の保護下に置かれる。何も知らなかったとはいえ、何か術を施されている可能性があるからな」
「じゃあ、それまではユウリの奴も会えないな」
「そう、だね」

助け出された志我二衣さんは無事だったが年の為、今は警察病院の保護下にある。
宮古島さん達も警察によって保護された。
居なくなってしまった人達は戻ってこないけれど、無事な人達もいて良かったと思う。
でも。

「新城、大丈夫なの?」