数枚の札が球体を包み込み、新城の手の中に用意された匣の中に封印された。

「これで終わり。アンタの負けだ」

匣の上に札を巻きつけて新城は志我一衣へ告げた。

「えぇ、そうですね。今回は私の負けです」

ニコリと微笑みながら志我一衣が車椅子から立ち上がる。

「実をいうと吸血樹はもう不要だったんです。私、もう怪異になっているので」

新城と対峙する彼女は瞼を閉じる。

「ヒッ!」

後ろにいた瀬戸さんが悲鳴を漏らす。
閉じていた瞼が開かれた。
その先は闇だった。
光がない黒い瞳。
人ではない存在に志我一衣はなっていた。

「貴方が来る事を考慮していたのですが、予定よりも早かったので焦りました……完全な怪異になる事はできませんでしたから私の負けです。でも、貴方の完封勝利というわけでもない」

フフフと楽しく笑う彼女。
ゴゴゴゴと屋敷が揺れた。

「あらあら、手駒が倒されたようですね。この屋敷にいる理由はもうありませんね。失礼させて頂きます」

スカートの裾を広げて挨拶をとる。

「またお会いしましょう。新城凍真様」

床から煙が噴き出してきた。

「逃げるぞ!」

口元を抑えながら叫ぶ新城。
僕と瀬戸さんは倒れている二衣さんを抱えて屋敷の外へ出る。