頭の中でフツフツと怒りが湧き上がる。
この人は相手をなんだと思っているのか。
あの子に、あの子を殺す理由がどこにあったというのか!

「雲川丈二!俺の方をみろ!」

続いて足を前に踏み出しながら新城は僕を振り向かせた。

「怒りに飲まれるな!冷静を殴り捨てるな!お前の役目は怒りで相手を叩きのめす事じゃないだろ!お前の後ろにいる俺を守るためだ!」
「……僕は」
「奴は俺が祓う。お前は、守れ!やることはいつも通りだ。わかるな!?」

胸倉を捕まれ、強く引き寄せられた。

「怒りに飲まれても良いことはない。怪異と相手をするときは冷静さを失うな!」
「でも」
「奴を許せない気持ちは理解できる。だが、それ以上にお前が奴らに引っ張られるな」
「……ごめん」

胸倉を掴んでいた手が離れる。

「わかればいい。余計なエネルギーを使わせるんじゃねぇよ」

僕を突き飛ばしながら新城が一歩、一歩、前に出る。
吸血樹の細い枝が伸びて新城に迫る。
枝が新城の肩や足を掠めるも歩みを止めない。

「ここまで近づいて頂けるなんてとても嬉しいです」

志我一衣が両手を伸ばす。

「色々とお話ししましょう。私は」
「悪いが」

新城は最後の一歩を踏み出す。

「これで終わりだ」

歩いてきた新城の靴跡が輝く。

「これは、ウホ!?」
「良く知っているな。本来の術とは違うけどな。吸血樹なんて超ヤバイ相手に有効な術だ。幸いにもここの御山は認めてくれたよ。自分の体を蝕む癌を切除してくれるってな!」
「まさか!!」

志我一衣が吸血樹をみる。
地面を走る光が吸血樹に届いた瞬間、悲鳴のようなものが室内に響き渡った。

「あぁ、そんな!」

ビキビキと吸血樹に亀裂が入る。
瞬く間に吸血樹がはじけ飛ぶ。
樹の中にあった不気味な球体へ新城が札を投げる。