「持ち込んだバカもバカだが、それを使ったな?お前」
「はい」

ニコリと一衣が微笑む。

「それがどういう意味かわかっているんだろうな?今後」
「私は人間の敵となりますね。えぇ、だって」

志我一衣が笑う。
整った顔立ちの美少女が笑っているだけの筈なのに悪寒が止まらない。
この場所が悪いのか、この状況下で笑う彼女が恐ろしいのか、僕はわからなくなってしまう。

「そうしなければ、貴方がきてくれないじゃないですか、新城凍真さん」
「……俺とあんたは面識がなかったと思うが?」
「貴方はそうかもしれませんが、私は一度、貴方をみているのですよ」

彼女は嬉しそうに話す。

「そのためだけに怪異となったというのか?くだらない」
「それは貴方の考えです。怪異になってでも、貴方を手に入れたい、どんな形でもいいから貴方の中にいたいのですよ」
「狂っている!アンタ、その為だけに大勢の人の命を奪ったの?」
「それが怪異になる為の条件でしたので」

瀬戸さんの言葉にも平然と答える一衣さん。

「言うだけ無駄だ。そいつはその他大勢だけじゃない、身内の命すらそこの吸血樹(きゅうけつき)に捧げているんだからな」
「え?」
「どういう、事?」

僕は震える声で新城に尋ねる。
今の言葉通りの意味なら――。
志我一衣が小さく微笑んだ瞬間、僕は。

「動くな」

右足を前に踏み出した新城の手によって止められる。

「新城、でも!」
「吸血樹は力技で相手じゃない」
「そうですね。祓い屋と守りての組み合わせは強いですけれど、吸血樹と守りての相性は最悪です。残念ですね。志我三衣を吸い込んだ相手の敵討ちができなくて」
「そんな、三衣ちゃんが」
「アンタ!それでも、姉なの!?妹を犠牲にして、二衣も犠牲にするつもり!?」
「犠牲……?そんな素敵なものではありません。人がエネルギーを欲するように、吸血樹は人の血を欲するから提供しただけの事」
「志我、一、衣ぃ」