扉の向こうは薄暗くも小さな建物があった。

「何、これ?」
「元々存在していた屋敷だな」
「こんな小さなものだったんだ」

僕は驚く。
小さな屋敷をドーム状にした形で包み込んで、そこから増築を重ねていったのか。
本来あった屋敷に新城は近づくとドアノブを捻る。
音を立てて開く扉。

「ここから先、視るものすべてが地獄になる。それでも俺と一緒に来る覚悟はあるか?」

新城からの最終確認。
僕は迷わずに彼の傍に向かう。

「僕は新城と一緒に行く。何があろうと、僕は新城を守るためにいる」
「そうかい」

呆れたような表情をする新城は瀬戸さんをみる。

「ここに来るまでに嫌なものをいくつもみただろう。お前が関わりたいという世界は最低で残酷で、救いなんて少なすぎる」
「それは」
「お前が俺達を見て、どういうものを描いたのか、何を感じたのか――」
「いいよ」

話を遮って瀬戸さんは真っすぐに新城の前に立つ。

「きっと、アタシが思っている以上に最悪な世界だって、でも、アタシは二衣を助けたい。助けたいからアンタについていく」
「望んでない結果が待っているかもしれないぞ?」
「それでも、行くから。何があろうと着いていく」

新城と瀬戸さんが対峙して、先に視線を外したのは新城だった。

「それなら良い。行くぞ」
「うん」
「わかった!」

開いたドアの向こうへ歩みを進める。