「八島さん?」
「これはこれは雲川様、瀬戸様」

ニコリと微笑むのはこの屋敷で執事をしている八島さんだ。
数日間みている笑顔の筈なのに今はどこか不気味に思う。

「どうして、八島さんがここにいるの?」

尋ねる瀬戸さんの声は震えている。
この場所で、こんなところで、笑顔で平然としている八島さんの姿が信じられないんだ。

「八島さん、貴方は……貴方は、何者ですか?」
「何者というのは難しい言葉ですな。私は主に仕える執事ですよ」
「アンタのいう主というのは志我一夏か?」

新城の質問に八島さんは笑う。

「あの無能は主ではありませんよ。ただ威張っているだけで役に立たない奴です。どれだけ奴の仕出かした尻ぬぐいをしたことか……私の主は違います。このような特別な力を頂けるのですから」

そういって微笑む八島さんの体が変貌していく。

「八島さん、貴方……怪異だったんですね」
「霊能力者の方々がそういう存在ですね。ですが」

ニヤリと笑う。

「なってみれば、わかりますよ……怪異と呼ばれる存在の力、年老いていくだけだった私が、全盛期以上の力を手にできたのです。これほど素晴らしいものはありません!」
「アンタの自慢話は興味ない。行方不明になっている人達を拉致しているのはてめぇだな?」
「その通りです。主からこの力を頂いた条件でね」
「八島さんが、三衣ちゃんや田宮さん達を!?どうして」
「主様の命令ですから」

表情を変えずに答える八島さん。

「あの田宮という男は逃げようとしたのでね。曲がりなりにも霊能力者を名乗っているからどのような力があるのかと思ったら……偽物だったのでがっかりです。がっかりでしたが、人を潰す感覚というのは、どうも癖になりましてねぇ」

肥大化した拳を開いて閉じて繰り返しながら話をする八島さんの目は狂気に染まっていた。

「まだ力の制御が難しいので、気を付けないとここを倒壊させてしまうかもしれません。大人しくしていただけますかね?」

この人は危険だ。

「待たれよ」

柳生さんが僕を止める。

「新城殿、ここは拙者に任せてもらおう」
「頼んでも?」