柄杓を持った新城を先頭に僕達は屋敷の中を歩いていく。
新城の腰に巻かれている紐を持ちながら僕達は進む。
紐がないと術にはまっている僕達はあらぬ方向に進んでしまい迷ってしまう。
実際、紐を持っていなかったら壁やトイレ、はたまた絵画に激突していただろう。

「アタシ、頭が痛くなってきた」
「僕も」
「新城殿、どこかで休み、彼らの術を解いた方が良いのでは?」
「……今は時間が惜しい。それに伝えないといけない事がいくつかある」

移動しながら新城が伝えたのはこの屋敷の周囲で起っている連続失踪事件。
失踪事件といっても、警察が動いている訳じゃない。
家出少女や脛に傷を持っている人達がこの周辺で失踪しているから村人達が噂していたという。

「事態は想像以上に厄介みたいだ」

壁を抜けて薄暗い不気味な通路に出た。
通路は等間隔に蝋燭の明かりがあるけれど、通路全てを照らしておらず不気味に感じる。

「ここは?」
「目的地へ繋がる最後の道だろうな」

柄杓をみながら新城が話す。
後ろから誰かにしがみつかれて振り返る。
瀬戸さんが青ざめて僕に抱き着いていた。

「瀬戸さん?」
「ごめん、何か、言葉にできないんだけど、怖気というか、この先にいっちゃいけないように感じて」

震えている瀬戸さんはしばらく息を吸って吐いてを繰り返すと離れる。

「もう大丈夫」
「新城、そろそろ教えて欲しいんだ。ここは一体なんなの?」