「大丈夫?」
「……あぁ、すまん」
「ここのところ、無理していたんじゃない?夜中にあっちこっち駆けまわっていた訳だし」
「それだけが理由じゃない」
手で僕を押し戻しながら新城は眼帯に触れる。
「え?」
「何でもない。とにかく、俺はアイツを怪異へ関わらせるつもりはない。そもそも」
振り返る新城は鋭い目で僕を見る。
「怪異と人が関わる際はある程度の距離感が必要なんだよ。距離感を見誤った奴は痛い目をみる。何より、自分から進んで怪異に関わろうとする奴は特に危険だ」
「……それは、ううん、その通りだ」
「アイツが何を切欠に怪異と関わろうとしているのかわからないが、お前も気を付けろよ。あの問題だって、解決した訳じゃないんだからな」
「わ、わかっているよ」
目を背けていた問題を指摘されて僕はため息を零す。
一カ月前、僕は妖怪の少女から結婚を申し込まれた。
ある事件の解決の為に彼女の力を借りる際に色々とあり、気付いたら結婚を申し込まれるという結果。
最終的に彼女の父親である青山と新城の説得によって結婚はなんとか有耶無耶にできた。
今は妖怪の住まう世界、妖界に戻っている。
青山が説得を試みてくれているがどうなるかわからない。
「どうしてこうも俺の周りは問題ばかり集まってくるのか」
「うぐ、申し訳ありません」
「そう思うなら次から気を付けることだな。全く」
新城の言葉が僕に刺さる。