「調べれば調べるほど、この屋敷ってわからないな」
一番手として屋敷の調査に乗り出したのは僕。
じゃんけんで負けた訳じゃない。あの時、グーを出しておけばという後悔はない。
ないったらない。
「もともとあった部分から付け足していくように増築されているけれど、屋敷の中心、元々あった部分へ辿り着けない……そういう増築をしているのかな」
志我家に残されている遺言によると増築を重ねるか、燃やすかの二択らしいけれど、隠されている屋敷の中心に秘密があるかもしれない。
地図に記されていない部分書き足していきながら歩いていくと車椅子の音が聞こえてきた。
「あら」
「キミは」
車椅子に乗ってやってきた少女は二衣さんや三衣さんと同じ顔。
志我一衣さんだろう。
彼女達と同じ顔立ち、違うところがあるとすれば病気のせいか頬が痩せて、恐ろしいほど、肌が白い。
「この前、挨拶をしました。志我一衣です。貴方は雲川丈二さんでしたね」
「僕の名前、憶えていたんですか?」
「これでも次代志我家当主ですから……出会う人の顔と名前を覚えるようにしているのです」
ニコリと微笑む。
車椅子を手で押しながら彼女はこちらへ近づいてきた。
「ここで何をなさっているのですか?」
「屋敷の調査かな?人が二日連続でいなくなっているから」
「あぁ、田宮様の所の助手と三衣の事ですね」
僕は驚いた。
病弱で部屋に閉じこもっているのに、屋敷で二人の人間が行方不明という事を知っている。
「先ほどもお伝えしましたが志我家当主になる予定の者ですから情報は最新のものを手に入れております」
「そうなんだ」
僕は彼女の態度が少し気になった。
「どうされました?」
「いえ、心配ですよね。三衣ちゃんがいなくなって」
「どうでしょう」
「え?」
彼女は小さく微笑む。
「あの子は不思議なところがありましたけれど、あれでも志我家のもの、命を奪われることは覚悟の上です」
「覚悟の上って、そんなこんな平和な時代に」
「平和?平和と仰いますか」
くすくすと彼女は笑う。
懐に隠している十手へ手を伸ばしそうになった。
「貴方は幸せな世界の住人のようですね」
「幸せな世界?」
一衣さんの言葉の意味を尋ねようとした時、車椅子の向きを変えて動き出す。
「貴方が幸せな世界の住人と分かった以上、お話はこれまでです。では、ごきげんよう」
話を無理やり打ち切る形で彼女は去っていく。
呼吸を整えようと息を吐いた。
最初は病弱な少女というイメージ。
でも、今は瞳の奥に不気味な何かを孕んでいるように感じた。
彼女は何者なのだろう?
ぐるぐると疑問を感じながら僕は屋敷の調査を再開した。
一番手として屋敷の調査に乗り出したのは僕。
じゃんけんで負けた訳じゃない。あの時、グーを出しておけばという後悔はない。
ないったらない。
「もともとあった部分から付け足していくように増築されているけれど、屋敷の中心、元々あった部分へ辿り着けない……そういう増築をしているのかな」
志我家に残されている遺言によると増築を重ねるか、燃やすかの二択らしいけれど、隠されている屋敷の中心に秘密があるかもしれない。
地図に記されていない部分書き足していきながら歩いていくと車椅子の音が聞こえてきた。
「あら」
「キミは」
車椅子に乗ってやってきた少女は二衣さんや三衣さんと同じ顔。
志我一衣さんだろう。
彼女達と同じ顔立ち、違うところがあるとすれば病気のせいか頬が痩せて、恐ろしいほど、肌が白い。
「この前、挨拶をしました。志我一衣です。貴方は雲川丈二さんでしたね」
「僕の名前、憶えていたんですか?」
「これでも次代志我家当主ですから……出会う人の顔と名前を覚えるようにしているのです」
ニコリと微笑む。
車椅子を手で押しながら彼女はこちらへ近づいてきた。
「ここで何をなさっているのですか?」
「屋敷の調査かな?人が二日連続でいなくなっているから」
「あぁ、田宮様の所の助手と三衣の事ですね」
僕は驚いた。
病弱で部屋に閉じこもっているのに、屋敷で二人の人間が行方不明という事を知っている。
「先ほどもお伝えしましたが志我家当主になる予定の者ですから情報は最新のものを手に入れております」
「そうなんだ」
僕は彼女の態度が少し気になった。
「どうされました?」
「いえ、心配ですよね。三衣ちゃんがいなくなって」
「どうでしょう」
「え?」
彼女は小さく微笑む。
「あの子は不思議なところがありましたけれど、あれでも志我家のもの、命を奪われることは覚悟の上です」
「覚悟の上って、そんなこんな平和な時代に」
「平和?平和と仰いますか」
くすくすと彼女は笑う。
懐に隠している十手へ手を伸ばしそうになった。
「貴方は幸せな世界の住人のようですね」
「幸せな世界?」
一衣さんの言葉の意味を尋ねようとした時、車椅子の向きを変えて動き出す。
「貴方が幸せな世界の住人と分かった以上、お話はこれまでです。では、ごきげんよう」
話を無理やり打ち切る形で彼女は去っていく。
呼吸を整えようと息を吐いた。
最初は病弱な少女というイメージ。
でも、今は瞳の奥に不気味な何かを孕んでいるように感じた。
彼女は何者なのだろう?
ぐるぐると疑問を感じながら僕は屋敷の調査を再開した。