「ねぇ、雲川」

このまま二衣さんの部屋に運ぶことも考えたが屋敷の中で何かが起こっている以上、一人にするのは危険と考えて瀬戸さんの部屋に運んだ。

「何考えているかわからない奴だけど、妹の事が大事なのね」

つんつんと気絶している二衣さんの頬を突く瀬戸さん。
その目は慈愛の感情がこもっている。

「瀬戸さんも、彼女の事を大事に思っているでしょ」
「一応、友達だからね。友達は心配するもの……なんでしょ」

ぷぃっと視線をそらした瀬戸さん。
しばらくして、ポケットから新城の用意した札を取り出す。

「ねぇ、これがあればコイツは狙われる心配がないのよね?」
「あくまで低級の怪異相手からだよ。今回の相手が怪異なのかわからないけれど、効果があるかどうかはわからない」

札を見た時に思う。
新城がこの場にいれば……すぐに事態が解決したかもしれない。

「雲川、アタシ、この屋敷のどこかに三衣がいるなら助けてあげたい」
「それは、僕も同じ、だ」
「アタシ達にできることってないの?」
「……わからない」

僕の言葉に瀬戸さんは苦悶の表情を浮かべる。

「無力って辛いね……友達一人助けられないんだし」
「そうかもね、でも、無力だから何もできないってわけじゃないよ」

僕は地図を広げる。
貰っていた屋敷の地図。
全部が明らかになっていないものの、主要な場所は抑えられている。

「この地図のわかっていない部分を調べていこう。もしかしたら三衣ちゃんがいる場所がわかるかもしれない」
「うん、うん!よしやろう!」

沈んだ表情から一転していつもの明るい表情を見せる瀬戸さん。
二衣さんだけを残すわけにいかないので僕達は交代で屋敷を調べることにした。