「はい」

円卓テーブルの前に座っている坂下さん。
彼女の指はテーブルの上に置かれたコインへ乗せている。
宮古島さんが机に文字が書かれた手紙を置く。

「これは霊を呼び出す為の簡易的なもの。人型幽霊を呼び出せる為に使います。瀬戸さん、室内の明かりを消してくれるかしら?」
「はい」

怯える二衣に抱き着かれながら瀬戸さんが室内の明かりを消す。
ぽつぽつと坂下さんへ言葉を紡いでいく宮古島さん。
坂下さんは机に置かれた用紙の上に置かれているコインへ指を乗せている。
がくがくと坂下さんが不気味な動きをしたと思うと俯いた。
指先はコインの上に置かれたまま。

「彼女に幽霊が憑きました……貴方の名前を教えてください」

坂下さんの指先がグググと動いて机の上の文字を滑っていく。
文字をみて、田宮さんが叫ぶ。

「この名前は、いなくなった私の部下の……そんなバカな!?」

田宮さんが信じられないと叫んでいる。

「インチキだな!?」
「田宮さん、貴方も霊能関係を生業にしているのなら頭ごなしに否定する事がどれだけ愚かな事かわかっていると思っていたのですが?」
「う、そ、そうですな!」

宮古島さんの指摘に顔を歪める田宮さん。
霊能力研究所の所長というのはこういう人でも成り立つのだろうか?
宮古島さんはいくつかの質問を重ねて、本題へ入っていく。

「貴方はどこでいなくなったのですか?」

坂下さんの指が動いて示された文字は「やしきのなか」だった。

「屋敷のどこでいなくなったの?」

続いて示された文字は「わからない」だった。

「どうして?どうして、わからないの?」

質問を続けようとした時、急にがくがくと坂下さんが怪しい痙攣をする。

「これ以上は彼女の体がもたないわ。降霊術はここまでよ」
「そんな!三衣がどこにいったのか」
「申し訳ないけれど、これ以上は坂下さんの体が耐えられないの……でも、ある推測がたてられるわ」

二衣さんが叫ぶ中で降霊術を終えた宮古島さんがある推測を伝えた。

「田宮さんの所の彼も、志我三衣さんもこの屋敷内でいなくなっているという事よ。つまり、この屋敷の中のどこかにいるということ」
「でも、男の人は幽霊になっていた……もしかしたら三衣も」
「あ、ちょっと!?」

真っ青になった二衣さんが倒れそうになって慌てて瀬戸さんと一緒に支える。

「彼女、部屋で休ませてきます」
「ごめんなさい、彼女に酷だったわ」

謝罪する宮古島さん達を残して僕達は部屋を出る。