昔、まだ新城凍真が一人で祓い屋をしていた時。

「貴方は怖くないの?」

ある理由から遠方の土地へ仕事で赴いた時の事だ。
そこで強力な怪異を祓う事になった。
普段は一人で行動している新城にとって誰かと行動するという事は新鮮かつ非常に面倒なものだった。
誰かが動きを止めれば、そこで立ち往生になってしまうし、強力な力を使ってしまえば色々な意味で目立ってしまう。
単独行動が当たり前の新城にとって集団行動というのが酷く面倒だとわかっただけ、儲けものと思えばいいだろう
本来ならさっさと行動して、一人で祓いにいきたかった。
だが、祓い屋として優秀な力を持っている凍真はある理由から目立たないようにしていた。
集団行動でひっそりと、端で大人しくしている。
だが、それが裏目に出た。
怪異が不意を突いて祓い屋の集団に襲い掛かったのだ。
事態に気付いた時に半数の祓い屋が傷つき、倒れていた。
怯えて、仲間を必死に守ろうとしている少女の前で新城は力を使う。
一撃で怪異を撃退する。
しかし、その怪異は――。

「夢か」

パチリと目を開けた新城。
目を開けるも視界に広がるのは闇、聞こえるのは天井から滴る水の音。
薄暗い洞窟の中に凍真はいた。

「今日が朝なのか、昼なのか、まぁどうでもいいか」

自虐的な笑みを浮かべて、新城は体を起こす。
それだけの動作だというのに湧き上がる力に新城は舌打ちする。

「まだ、溢れているか」

もう数日はこの中にいなければならないだろう。

「最初の頃よりは力が落ちている」
「柳生さんか」

薄暗い闇の中から音もなく現れた男は柳生十兵衛。
彼にこの洞窟を勧めてくれた人物だ。

「霊能力者は生まれた日が近づくと霊能が一時的に強大となる……それがいらぬ騒動を起こす可能性がありえる故に、この洞窟がある」