「え?」

小さく笑っている筈なのに、肉食獣を前にしたような雰囲気を感じた。
これはあれだ、千佐那と会っている時と似たようなもの。

「数日かもしれないけれど、とても、楽しみ」

三衣ちゃんはそういうと僕に背を向けて歩いていく。

「もしかして、地雷を踏んじゃった?」

僕の呟きに応えてくれる人はいなかった。




















翌日。


昨日の出来事は夢だと自分へ言い聞かせながら食堂に入る。

「雲川!」

食堂に入ると慌てた様子の瀬戸さん、そして二衣さんがいた。

「どうしたの?」

少し離れた所で宮古島さんと田宮さんが様子を伺っている。
ただ事ではない空気が漂っていた。

「三衣が……いないの」
「え?」
「いなくなっちゃった、三衣が」

この時、僕はわかっていなかった。
館から人が消える。
不思議思議館で異変が起きていた。
この時になるまで僕達は全く理解していなかった。