三つ子にまで鬱陶しがられる程に友達が欲しかったのか。
さらりと毒を吐いた三衣ちゃんに驚く。

「三衣ちゃんは友達とか欲しくないの?」
「別に、いなくても大丈夫」

態度を見る限り、嘘偽りはないと思う。

「そうなんだ、二衣さんと違うんだね」
「三つ子だからって性格まで一緒じゃない。一衣姉さんは人嫌いだし、二衣は友達に飢えている」

一緒くたにされた事が不快のようで瞳に怒りの感情が浮き出る。

「三衣ちゃんは?」
「生きる理由を知りたい」
「生きる理由?」
「どうして人は生きるのか、なぜ、生きなければならないのか」
「哲学みたいな事言うね……」
「こんな家に住んでいたら嫌でもそう思う」
「……あー、うん、確かに」

外も中も奇々怪々な屋敷。
こんなところにいたら哲学的な考えが芽生える……かもしれない。

「貴方は?」
「え」
「貴方は生きたいとか、そういうことを考えた事ある?」
「あるよ」

普通なら戸惑うかもしれない。
僕は迷わずに答えられる。

「どうして?」
「……生きたくても生きられなかった子との約束があるんだ」
「約束?」

頷く。
僕は今も覚えている。
あの子の約束。

「その約束があるから僕は生きたい。生きて生きて、生き抜いてやると決めた」
「フフッ」

三衣ちゃんが笑っていた。
無表情に思えたけれど、小さな笑窪ができている。

「やっぱり、貴方、面白い、とても興味深い」

僕の顔を覗き込んでくる彼女の瞳は知的好奇心に満ち溢れていた。

「幸せな貴方と一緒にいればわかるかもしれない」