「あの人はそれで良いみたいですけど、少し気になるわね。行きましょうか、はるひちゃん」
「わかりました」

そういって立ち上がる宮古島さんと坂下さん。

「これで失礼しますね？雲川ささん」
「はい」

会釈すると二人は食堂を出る。
八島さんが食事を運んできた。
気付くと、対面の席に三衣ちゃんが腰かけている。

「食べないの？」
「食べます」

用意された食事を前にして席に着く。
しばらく無言の朝食が続いた。

「誰かと一緒に食べるって、楽しい」
「……普段は一人なの？」

呟いた三衣ちゃんの言葉に僕は尋ねる。

「一衣ちゃんは病弱だから、部屋で済ませる。二衣ちゃんは自分勝手だから三衣が食べる時にいない……いつも一人」
「そう、なんだ」

複雑な家庭環境に僕が口を挟むことはない。
僕だって家庭環境に色々と問題を抱えていた人間の一人だから。
家庭の問題は第三者が早々に解決できるものじゃない。
新城のような強い人間じゃないと。

「だからジョージと食べるご飯はとても新鮮、昼も一緒に食べよう」
「……良いよ」

はにかんだ笑顔の三衣ちゃんに僕は頷いた。
この館にいる間くらいは彼女を笑顔でいさせてあげたい。
そう思うくらいバチは当たらないと思う。






「ご飯、お腹すいたぁ」

食事を終えて三衣ちゃんと談笑していると瀬戸さんがやってくる。
館の中を二衣さんと追いかけっこしていたみたいだ。

「疲れたぁ」
「お疲れ様、捕まえられたの？」
「無理、なんなのアイツ、気付いたらアタシの背後にいるとか……そもそも、なんでアタシの尻とか胸を触ってくるわけ！？同性だから許されるわけじゃないわよ！？」

どうやらまだ怒りは収まっていない様子。