「意外と柔らかくてびっくりしたわぁ」

部屋の中で胸元を片手で抑えながら叫んでいる瀬戸さん。
赤を基調としたワンピースを着て、黒い髪をポニーテールにした少女が片手をニギニギと動かしていた。
そして、先ほどの少女と同じく左右の目の色が違う。

「どういう、状況?」

懐から出そうとしていた十手を戻しながら瀬戸さんへ声をかける。

「こっちが知りたいわよ!ノックして入ってきたと思ったら急に人の胸を触られて、男だったら容赦なく蹴り飛ばしていた!」

怒りに顔を染めながら叫ぶ瀬戸さん。

「えっと、キミはどうして……あれ?」

隣にいた少女へ事情を尋ねようとするもいつの間にか姿を消していた。

「どこいったぁ!?」

外に飛び出す瀬戸さん。
よほど、胸を触られた事が我慢できないようだ。
女性同士だから問題ないんじゃないかと思うけれど。

「さっきの子、部屋にいた子と似ていたような」

首を傾げていると瀬戸さんが戻ってくる。
荒い呼吸を整えるようにしてベッドに腰掛けた。

「えっと、その様子だと」
「逃げられた。この屋敷迷路なのよ!」
「まぁ、迷子にならなくて良かったよ、本当に」

イライラを隠せない表情の瀬戸さんに今は余計な事を言わない方がいいと思って僕は彼女の部屋を出る。

「あぁ、こちらにおられましたか」
「八島さん?」

部屋に戻ろうとすると八島さんがやってくる。

「他の参加者の方も揃いました。18時から夕食を始めますので、食堂へ集まってください。こちら、地図にございます」
「地図?」
「雲川様、瀬戸様の部屋から食堂に向かう為の地図です」
「ありがとうございます」

地図を見るとどのように食堂へ向かえばいいかわかりやすく記されていた。

「では、私はこれで」
「あの!」

八島さんへ僕は先ほどの出来事を話す。

「それはおそらく旦那様のお子さん達でしょう」