「何、これ?」

瀬戸さんの一言は奇遇にも僕の気持ちを代弁してくれる。
目の前に広がる洋風の屋敷。
洋風の屋敷と言えば、映画やドラマに出てくるような豪邸、もしくは綺麗な建物をイメージするだろう。
でも、目の前に広がる屋敷は一言でいうと異質だった。
屋根の上に二つ三つと屋根が並び、壁の側面は窓ではなく複数のドアがついている。
二階建てかと思ったら後から三階、四階を足したような形状。

「驚きますよね。既に来られている方も同じ表情をされておりました」

八島さんは苦笑しながら僕達のそばにやってくる。

「あの、これは一体?」
「私も詳しいことは知りません、元々は普通の屋敷だったようですが、先々代の時からこのような形になっていたようですよ」
「へぇ~」
「さぁ、こちらへお部屋に案内します」

八島さんが先導して僕達を部屋に連れていく。
室内は外よりも奇抜だった。
突出している壁があったり、上階や下階へ繋がるようにできていない階段。
天井に扉がある等、理由が謎だ。

「迷路みたい」

ドアが二つ並んでいる壁を通り過ぎた所で瀬戸さんがぽつりと呟く。

「そうですね、一年に一回、どなたかが迷子になっております。加えて増築する際に特殊な材質を使ったようで電波も通りません」
「えぇ!?大丈夫なの?」
「ご安心を」

八島さんは壁に設置されている固定電話を指す。
今どき珍しいダイヤル式の電話だった。

「電波は通りませんがあぁいう電話が各所に設置されております」
「迷ったら電話して誰かに助けてもらうという事ですね?」
「そうです」
「うわぁ~」

僕の隣で信じられないという表情をしている瀬戸さん。
八島さんがいなかったら僕も同じ表情をしていた。

「お二方の部屋はこちらです」

しばらくして二つの部屋にたどり着いた。
見た感じ、普通の部屋だ。

「中は……まともかな?」