「はい、えっと」
「アタシ、と雲川が新城凍真の代理でやってきました!」
「えっと、はい、新城が参加できないという事で僕らが代理でやってきました」
「我が主より伺っております。さぁ、車はあちらですので。荷物はお待ちしましょう」
「いえ、大丈夫です。それくらいは僕達の方で」

荷物を受け取ろうとする八島さんにやんわりと断りを入れながら僕は瀬戸さんの分も持つ。

「わかりました。車はこちらです」

八島さんの案内で駐車場に停められているワゴン車へ乗り込む。

「何か、有名な政治家さんのパーティー?らしいからリムジンかなと思っていたらまさかのワゴン車なんて」
「瀬戸さん」

流石に失礼だから止めようとしたら運転席にいる八島さんが苦笑する。

「本来ならリムジンなのですが、向かう先がリムジンでは厳しいので、このような車なのです」
「え、そんな変なところへ向かうの?」
「……瀬戸さん。まさかと思うけど、電車の中での話を聞いていなかった?」

僕の言葉に瀬戸さんはこてんと首を傾げる。

「はぁ……車内でもう一回、説明するよ」
「よろしく~」

先が思いやられる。
そんな言葉が頭を過ぎる。













「電車の中の話って何だったの?」
「覚えていたんだね」

ワゴン車が走り出した所で瀬戸さんが尋ねてくる。

「……もしかして、バカにしている?」
「そんなことないよ」

鋭い。
誤魔化しながら、ちらりと八島さんの方を見る。
エンジン音や外から聞こえるセミの鳴き声でこちらの声は聞こえないだろう。

「これから行く先で集まる人達に気を付けてって事だよ」
「気を付けてって、政治家のパーティーでしょ?アタシも昔、両親と一緒に行った事があるけれど、酷く暇なものだった」
「それは普通の政治家のパーティーでしょ?」