「い、行こっか」
「う、うん」
まだまだぎこちない二人。
けれど、お互いの存在がすでに、他の誰よりも重いことは明白。
許嫁からはじまる、二人の恋。
煌は隣を歩く月音に、昨日は流てしまった話題を問いかける。
「そういえば月音ちゃん、昨日月御門の家から帰り際、何か言いたげな顔してたけど、言いたいことあったんじゃない? 俺、月音ちゃんに何か我慢させるのいやだから、出来たら聞きたいんだけど……」
「昨日? ……あ。あー、あれは……その……」
「あ、家とか仕事関係で聞いちゃいけない話題だったら無理しないでね?」
「いや、そうじゃなくてですね……」
「うん?」
「その……小田切くん、父様と仲いいなあって思って……父様にイラっとしてた」
「碧人様に?」
「うん……。そ、それだけだから、気にしないでっ」
「……俺が碧人様と仲いいって見られてるんだったら、割と嬉しいかも。だって月音ちゃんの大事なお父さんだから」
「……嬉しいの? 五十路のおっさんだよ?」
「特別な嗜好とかじゃないから変な言い方しないの。月音ちゃんとその……結婚するってなったら、やっぱり月音ちゃんの家族には祝福してほしいし、嫌われたくないよ。だから、仲良く見えてるんなら嬉しいなってこと」
「そ、そっか……」
煌の考え方は月音の中にはなかったもののようで、頬を染めた月音はぱっと顔をそむけた。
その赤さの理由が自分の言葉の中にあったと遅れて気づいた煌も、話題を変えなくちゃと焦って口を動かす。
「月御門や水旧と友達になったって知られたら、月音ちゃんの友達驚きそうだね」