「行ってきま……小田切くん!?」
自分の家の玄関扉を開けるなり目についた姿に、月音は頓狂な声を出した。
「おはよう、月音ちゃん」
門扉のあたりで待っていたのは煌だった。
「おはようっ。どうしたの? また何か悪いものに憑かれちゃった?」
月音が小走りになってやってきて、門を押す。
「いや……普通に、迎えに?」
煌に言葉に、月音は首を傾げた。
「なんで疑問符?」
「俺もわからんから、その……付き合ってる人がどうするか、とか……」
「あ……」
しゅかああっと、月音の頬が朱に染まる。そ、そういう意味だったか……と。
煌は、赤くなる顔を振り切って月音に言った。
「ただ……早く逢いたかったので」
「さ、さようですか……」
照れた煌と恥ずかしい月音なので、お互いぎこちない。
「碧人様に了解はもらってるから。朝来ること」
「そ、そうなんだ。ありがとうっ」
お互い、顔をまともに見ることも出来ていない。
「おはよう、煌くん」
そんなたどたどしい雰囲気の中、碧人の声がした。
「お、おはようございます」
玄関から出てきたスーツ姿の碧人がにこりとする。
「朝からありがとう。月音には黙っておいてみたよ」
「言ってくださいよ! 朝から私の心臓壊す気ですか父様!」
月音に噛みつかれても、碧人は「あははー」と笑うだけだった。
「まあ、仲良くね」
そう言って、楽しそうに先に一人で行ってしまった。
残された煌と月音はお互いを見られないでいたが、そっとあげた視線が同じタイミングでぶつかって、またさっと顔をそむけた。