「あの方か……。直々に守護霊に任じられたのなら、守護霊として格が高く強いのも納得だよ」

「え、なんすか、兄さんなんかやばい人にお願いしちゃったんですか?」

「いや、恐らくだけど、冥府(めいふ)の役人だ。普通に生きていたら関わることのない方だから、煌くんは気にしなくていいよ。人間に害悪ある存在というわけでもないし、人の世に手出ししてくる人でもないし」

「そういえば小田切くん、取り憑かれても何日かでいなくなるって言ってたけど、お兄様がめちゃくちゃ強いから護ってくれてたんだね」

「そ、そうだったんだ……」

まず亡くなった兄が自分の守護霊になっていただけでも驚きなのに、兄は何やら偉い人に頼み込んで自分の守護霊になってくれたらしい。

取り憑かれやすい自覚はあったけど、二、三日もすればいなくなっていたのは、その兄が助けてくれていたからなのか。

(兄さん、ありがとう。帰ったらお供えするね。だから月音ちゃんとのこと邪魔しないでください)

「あ、今お兄さんが傷ついた顔になったぞ?」

「ガーンッってなったね」

「そ、そっすか……」

まさかだが、煌が考えていることが守護霊の兄には筒抜けかもしれない疑惑が浮上した。

「まあ、私も妖異は屈服させる方が得意だから。守護霊とはいえお兄様には負けないから心配しなくていいよ、小田切くん」

「お前華音そっくりだな」

「さっきは似てないって言ったじゃないですか!」

またも親子は言い合いになってしまった。

碧人が煌に、早く婿にと要請してくる理由がなんとなくわかった。

(かといって月音ちゃんと碧人様は嫌いあってるわけでもないようだし、喧嘩するほど仲がいい?)

「月音ちゃん、碧人様。改めて、よろしくお願いします」

言い合う二人に向かって煌が告げると、はたと二人の応酬は収まった。

そして、煌を見て笑顔になる月音と碧人。

「こちらこそっ。よろしくお願いします。小田切くん」

「気が早いと思うかもしれないけど、どうか末永く――娘と仲良くしてほしい」

二人から言葉を返されて、煌は目元が和んだ。

「はいっ」