突然風向きの変わった話に、煌を一瞬のどが詰まった。

「っ、な、なんでそうなるんすかっ。俺まだ高一ですけどっ?」

碧人は遠い目をする。

「娘とはよく言い合いになるんだ。月音は煌くんの言うことは聞き入れるようだから、早めにうちに来てもらえると助かるなあと。あと私も煌くんの言うことなら聞けそうだし。まあ大丈夫だ。私も無理を通して華音と結婚したし」

「どういう理屈ですかっ。俺より月音ちゃんの言うこと聞いてくださいよ」

急すぎる展開に思わず突っ込むと、月音が悲壮な顔をした。

「小田切くん、お婿に来るのいやなの? ……いやだったら無理しないでね。小田切くんの好きな人と一緒になった方が絶対にいいし――」

「いやじゃない! いやじゃないです! 婿にいきたいです!」

そこを月音に誤解されてしまうと自分の立場がないので、全力で否定した。

「なら万事解決だね」

にこーっと月音と碧人に微笑まれて、親子にはめられたと気づく煌だった。

(……似た者親子!)

そう頭の中で毒づくしか、訴える場所がなかった。

「………」

隣を歩く月音と、その向こうの碧人をちらりと見る。

正直煌は、自分が月音の側に足を踏み入れるとは思っていなかった。

「あの、修行ってどんなことをするんですか?」

煌が碧人に向けて問うと、月音も碧人を見上げた。

「まずは禊(みそぎ)のために滝行(たきぎょう)かな」

「行きたいです! 滝行してみたかったんですっ」

月音の食いつきがすごかった。

その様子から、月音は諦めていたけれど、本当はそういうこともやりたかったようだと煌は思った。

「滝行って滝にうたれるやつでしたっけ?」

「そうだよ。祝詞(のりと)を唱えながらとかね」

「祝詞……は全然言えないんですけど、可能だったら俺も一緒に行ってもいいですか?」

「小田切くんも来てくれるの!?」

月音が今度は驚いたような、それでいて嬉しそうな顔で煌を見てくる。

「うん、禊って言うんなら、俺もやってみたいなーって。本気で憑かれちゃう体質どうにかしたいし……」