「うん。嬉しいです。嬉しすぎて真顔になるタイプなんです」

「……普段混乱しやすいのに?」

「普段混乱しやすい反動だと思う」

月音が、身体を煌の方に向けた。

「小田切くん、その……たぶんうちのお婿さんになると、しがらみとか、色々大変なことがあると思う。でも、私が全力で護るので、小田切くんさえよかったら私のお婿さんになってください」

真正面から言われて、煌はふっと軽く笑みが浮かんだ。

「月音ちゃん、それ俺のセリフ」

「そうだよ月音。それに、お前がそれを言うなら、先に言うことがあるだろう」

父に言われて、月音はうっと息を詰まらせた。

「煌くんはまっすぐに言ってくれただろう。お前もちゃんと返さなければいけないよ」

「……じゃあ父様外に行ってください」

「……父を邪険にするとはこの娘」

「恥ずかしいもんは恥ずかしいんです! ってか私より先に小田切くんに告白されるとか、私が父様を恨みの末ぶん殴っても道理ですよ!」

「落ち着こうね、月音ちゃん。どんな理由があってもぶん殴ることを通す道理はないから」

「小田切くんが父様に先に言っちゃうからでしょ!? 私が一番に聞きたかったのに!」

「う……ごめん」

これにおいては立場の弱くなる煌なので、反論できない。

月音はふんすと顔をしかめさせた。

「百回くらい言ってもらわないと私の父様ぶっ飛ばす計画は頓挫しないよ」

「ひゃっかい!? さすがに俺も恥ずかしいよそれ」

「つーん」

「擬音を口するの月音ちゃんのクセだよね? ――わかった、言うから。百回でも千回でも言うから」

開き直った煌の言葉に、月音は「えっ」と煌を見た。

「い――いや、千回は多すぎ……かな?」

さすがに要求を上回ってくるとは思わなかったのか、月音の声が引きつっている。

「言います。俺は月音ちゃんのことが好きです。月音ちゃんが大好きです。月音ちゃんが――」

「ああああ! 大丈夫! もういい、もういいです! 恥ずかしくて死ねるから!」

煌の口を押えるように、月音が飛び掛かってきた。