「……なんでしょうか」
「まず、お前に陰陽師修行をつける。叔父上たちには、理由は父がなんとでもつけよう。お前を陰陽師として育て上げ、己の血を使わずに身を護る方法を教える」
「はい。承知しました」
「そしてもうひとつ。さっきの話に戻るが、煌くんがお前の許嫁になってくれる。煌くんの家が術師やあやかしと関係ないことは、御門のご当主が確認済みだというから、問題はない。――だがこれは、月音と煌くんの感情の問題もある。父の言いつけだからという理由で、受け入れる必要はない」
「………」
月音、その説明を聞いて目が皿のようになった。
父を見たあと、ゆっくりと煌を見てきた。真顔にびくっとする煌。
「……小田切くんは、いいの?」
「いいって言うか……その、さっき勢いで碧人様に告白した……」
「……父様に?」
なんで。と、月音の目が言っている。
煌は白状する。
「違います。月音ちゃんのことが好きだって、ごめん、月音ちゃんに言うより先に碧人様に言っちゃった……」
それを聞いた月音、皿の目のままぱちぱちと瞬いた。
「……小田切くん、私のこと好きだったの?」
「……うん」
煌も、なんでこんな告白を……と、順番が狂っていることを後悔した。
「……私、問題児すぎるでしょ。常から行動がやばいし。小田切くんはいい人なんだから、まっとうな相手がいると思うんだけど……」
月音の言葉が、先ほど碧人に否定された自分の言葉と同じで、煌はその言い方を否定した。
「えーと、否定できなくて申し訳ないんだけど、俺が月音ちゃんを好きだってのは本当だから、まずそこだけ受け取ってほしい」
……です。と小さく言うと、煌は恥ずかしさがこみあげてきた。
『好き』だなんていうの、本当に本気で始めてだ。
男女問わず友達の多い煌だが、恋愛ごとには疎く来ていた。
告白されることはあったけど、告白したのは初めてだ。
しかも、好きな人の父親に先に言ってしまうという珍事。
「嬉しいです」
こくん、とうなずく月音。
「……ほんと?」