「もちろんでございます!!」

「わたしのことも百合緋って呼んでほしい……だめ?」

「だめではないです! ゆ、ゆ、ゆ、百合緋……ちゃん」

(だめだ―――! 恥ずかしすぎる!)

沸騰しそうな顔を両手で覆うと、その手を百合緋につかまれた。

指の隙間から百合緋をうかがい見る。

目元に涙を浮かべた百合緋が、にこっと笑った。

「月音ちゃん、いじり甲斐があるわね」

「……ふえっ?」

「髪はサラツヤだし、お肌もつやもちだし、とっても素敵! ねえ……わたしに月音ちゃんのこと、任せてくれない?」

――それがどういう意味か一瞬わからなかったけど、昼間の白桜の言葉を思い出す。

『着せ替え人形に――』。

ガッと、月音が百合緋の両手を掴み返した。

「よろしくお願いします百合緋ちゃん!」


+++


「あー、つっかれたー」

「お前がバカなこと言わなきゃもう少し早く戻れたんだよ」

「やだね。白が受けてくれるまで言うね」

「……お前ここがどこだかわかっているか? 御門邸内ならお前を抹殺するのも簡単だが?」

「「怖いこと言うな(言わないでください)!!」」

煌と碧人に同時に怒鳴られて、白桜は不機嫌そうな顔になる。

神崎家で一通りの話をした白桜と黒藤は、煌に加え碧人も連れて御門別邸に戻ってきていた。

神崎家のことは碧人から月音に説明を――というのが、白桜と黒藤、二人の一致の意見だった。

碧人も、それを承知してついてきた。

「碧人様は月御門の家に来た事あるんですか?」