「――御門のご当主、小路の若君。お二人にはどう見えておいでですか?」

「月音が煌にはめっちゃ懐いてる」

「小田切のことを一番頼りにしているように見受けられる」

真剣白刃取りをする黒藤と、そのまま圧(お)し切ろうとしている白桜。

碧人に訊かれて真面目に答えてきたが、答えている場合ではないだろう。

マジで人ん家で何やってんだあんたら。迷惑すぎる。そして碧人様も普通に訊かないでください。

「……ということのようです。もちろん月音の意見も聞きますが、ここは小田切くんに受けてもらいたいと思います。……どうですか?」

碧人に静かな眼差しで問われて、煌は背筋を正した。

「はい。よろしくお願いします」


+++


「………」

御門別邸の客間に一人になった月音はそわそわしていた。

三人が出て行ってから、玄関で出迎えた人とは違う、中学生くらいの少女がお茶を持ってきてくれた。

特に何か訊かれることもなく、「もうじき百合緋様がいらっしゃいます」と告げてにこやかに退室していった。

彼女が、白桜の言っていた陰陽師見習いの一人なのだろうか。

御門別邸なんて、本来月音には縁のない場所だ。

ここが白桜様と百合緋様の御住まい……そう思うと心臓がバクバクし始めた。

(おおおおお、落ち着け私っ。今は白桜様の御言いつけを護るんだ)

白桜と黒藤が連れたって出ていくなど、よほどのことがあったのだろう。

とにかく落ち着け、落ち着け、と唱えていると、座っている格好からは右手側になるふすまが開く音がした。

「……か、神崎さん?」

「はいっ」

控えめな声に呼ばれて振り返ると、私服姿の百合緋がふすまを開けたところだった。

「お、お邪魔しております、百合緋様」

正座の姿勢で向きを変え、畳に手をついて頭を下げた月音を、百合緋は慌てたように止めた。