「はい……。神崎は他流派との婚姻を禁じています。桜木は退鬼師一族で陰陽師流派ではありませんが、他の術師一族であることには変わりありません……」

「お前が禁忌を破り他の術師と婚姻したため、今後神崎の血を狙った者に婚姻を迫られたときの対策として、月音に何も教えない道を選んだ――ということか」

「は……」

だんだん覇気のなくなっていく碧人。

そこまで追い詰めなくても……と煌は思うが、なにぶん何もわかっていない自分が口をはさんでいい気がしない。

そもそも碧人にも、誰だこいつ、と思われていることだろう。

「教えた方がいいと、俺は思うけどな。月音のあの感じだと、試しに血をぶつけてみたら妖異が消えたからその手法を取ってるって感じだった。桜木家の末裔ともなれば、あの惨事が繰り返されないとは言えない。月音に話して、二度とその手は使うなと言っておいた方がいいいと思う」

黒藤の言葉に、白桜もうなずいた。

「俺も黒に同感だ。あれは繰り返してはならない。月音が知らないということは、それだけで罪だと言える」

(知らないだけで罪!? 話がでっかくなりすぎじゃ――)

煌はまたもや驚いてしまったが、白桜も黒藤も真面目な顔だ。とても茶化しているようには見えない。

(……俺が知らないだけで、大変なことがあったみたいだ……)

月音の母の実家であるという、桜木家。

その血をもって妖異を滅するとか言っていたけど、それを月音が知らないのは危険なことのようだ。

「左様ですか……ですが今更、どうすれば――」

「ここでひとつ提案だ、碧人」

今度は少し軽い口調で黒藤が言った。

そのままぐいっと肩を引かれた煌。

(ん?)

「この小田切煌は、霊媒体質で霊感があって、家はごく一般的な家庭。それは白が調べてあるから間違いはない。そして何より、学内で一番月音のことを理解している奴だ。まあ、付き合ってるとかまだそういう段階ではないんだけど、俺は月音の許嫁に、この煌を推す」

「俺も同じく、だ。他流派の婚姻に口出しをするな――という次元は、お前の婚姻があった時点ですでに超えていると思うぞ、碧人」

「………」

碧人に穴が開くほど見られて、煌はどうすればいいのかわからなくなった。

二人が煌だけ連れてきたのは、この話をするためだったらしい。