碧人に呼ばれて、白桜と黒藤は敷地内に入った。

黒藤に目で促されて、煌も最後尾に続く。

客間らしき和室に通されて、四人が座布団に座る。

白桜と黒藤が隣に並び、煌は黒藤の隣に少し下がって座った。

「白」と黒藤が呼んだのを合図に、白桜が片手に印を組んで小さくつぶやいた。

「み、御門のご当主?」

「勝手な判断ながら、結界を張らせてもらった。誰にも――聞かれてはならないことだと考えた」

びくり、と碧人の肩が揺れた。

それを不審に思う煌。

思い当たることでもあるのだろうか。

碧人、と黒藤が再び鋭い声で名前を呼んだ。

眼差しも射るようだ。

「――月音は神崎と桜木(さくらぎ)家との混血だな?」

黒藤の指摘に、碧人の顔色は真っ青を通り越して白くなった。

その反応は肯定だ。

煌は考えた。

月音のみならず、白桜や黒藤からも、月音は他流派とは婚姻できない。だからお前は合格だ――と、煌の認識していない心まで見透かしたようなことを何度も言われている。

月音の父が神崎流の当主ならば、母親は一般家庭の出身なんだろう。

だが、二人は月音の母親の出自に何かを疑っているようだ。

桜木家というのは、誰の口からも聞いたことのない名前だ。

碧人は唇噛んでうつむいたあと、少しだけ顔をあげて答えた。

「はい……確かに、亡くなった月音の母親は、桜木家――退鬼師(たいきし)桜木の末裔でした」

たいきし? それは陰陽師とは違うのだろうか? 

声を出すのもはばかられる緊張感ただよう和室で、煌は思考する。

すっと横に見た白桜と黒藤からは、表情が消えていた。

「「―――」」

……え? な、なんだその反応は……。

「御門のご当主? 小路の若君?」

二人の様子が変わった理由がわからなかったのか、碧人が呼びかけた。

それにはっとしたように、黒藤が頭(かぶり)を振った。

「いや――、な? 白……」

「ああ……これも言霊(ことだま)の力なのか……」

白桜が軽く息をついた。

それに、碧人は疑問を持ったようだ。

「どういう意味です?」

白桜が黒藤を見やると、黒藤が口を開いた。