「百合緋様はお休み中なのですか……」
「うん。たまに調子を崩すんだ」
「白の式がついてるから、そう心配はねーよ」
「………」
(なんでだ。どうしてこうなった。なんでこの四人で帰っている?)
煌の頭の中は疑問符だらけだった。
昼に月音と友達になったばかりの白桜が(しかも脅して)当たり前のように、下校しようとしていた月音と煌のところへやってきたのだ。
校舎を出たとことで黒藤もやってきて、この面子とあいなった。
視線を……視線を浴びまくっている……。
目立つ二人と、その二人をつけまわしていた月音が一緒にいるので、何事だとひそひそ言われているのも聞こえてくる。
自分だけ部外者の自覚のある煌はなかなかに居心地の悪い思いだ。
「白桜様は、月御門の方と帰ったりしないのですか?」
「うん、基本的にみんなそれぞれの時間軸があるから。俺は百合姫とは一緒だけど、それだけだよ」
「そうなのですか……」
月音もいい加減白桜と会話することにも慣れてきたようだ。
(いいことなんだけど……友達だし……もやっとするのは月御門がイケメン極めてるからだろうなあ)
実は腹黒い面もあると知ってしまったが、基本的に見目だけでなく言動がイケメンというのが白桜だ。
そして実は女の子、といっても一筋縄でいく素性ではないので、どうしても煌の中では男扱いになってしまう。
月音と仲良くしているともやっとする。
黒藤が歩く速度を落として、一番後ろを歩いていた煌に並んできた。
「煌、白になんか言われた? 月音のことで」
「……なんでわかるんすか」
煌が不機嫌な声で返すと、黒藤は唇の端で笑った。
「煌がわかりやすいから。ずーっと白のこと睨んでるし、隣の月音を見るときは焦ってる顔してるし。月音を白に取られると思った?」
「いや、その心配はないって月御門に言われましたから。って、そんな俺が月音ちゃんを好きみたいな――」
「え? 好きじゃないの?」