「強い。白桜様も御門流の歴史の中でも有数の陰陽師って言われてるけど、当代最強の呼び名で呼ばれるのは黒藤様なの。やばい、推し活がたぎってしまう……!」

「俺はキャラぶっ壊れ気味な月音ちゃんが心配だよ。でもそんなすげー人がまた変な時期に転校してくんだね?」

「そうだね……小路流は複雑らしいってのは聞いたことあるけど……。そういえば小田切くん、どうしてこんなとこにいるの? 私になんか用あった?」

「あったあった。月音ちゃん探してきたらなんか不審な行動に及んでるから忘れてたんだけど、これやばない?」

「え? って、うおおお! 何またヘンなモノに憑かれてんの!?」

しゃがんでいる煌が指さしたのは、自分の右肩のあたり。

そこを見た月音も叫び声をあげた。

そこには異形崩れとも称すべき、くぼんだ目と口だけが見える、泥のようなものが浮かび上がっている。

「小田切くん、霊媒体質すぎるでしょ……」

「いやー、俺も登校してるときからなーんか肩が重いなあって思ってたんだよね。どっかでひっかけてきちゃったみたい」

「いやそんな軽く言うことではないよ。ねえあなた、小田切くんに害意はないみたいだけど……」

月音が、無害だとわかって問いかけると異形崩れからかすかに肯くような反応があった。

「……あー……そういうことか。小田切くん、登校途中になにかお供えしてあるもの、あった?」

「あ、うん。なんか事故のあとみたいなの……」