煌がツッコむと、白桜はにこっと笑った。
「可愛いものって可愛がりたくなるよな」
「うーわ、実は腹黒ドSかよお前」
「腹黒でもないと御門の当主なんてやっていけないぞ?」
「でも黒藤先輩はいい人だったよ。影小路家の次期当主なんだろ?」
「影小路家というよりは、小路流な。黒は普段の言動に残念な部分が多くて、まともに人間性を評価してもらえないんだよ。あいつが俺なんかより数億倍まっとうな奴だって、俺も知ってる」
「単位、数億なんだ……」
「俺は猫かぶりまくってるから」
「そうみたいだな……。……ところで、さ」
「なんだ?」
「月御門は――女の子に戻りたいとか思うの?」
黒藤の真意を聞いて、煌は黒藤を応援したい気持ちも少なからずあるためそう訊くと、白桜が驚いた顔で固まった。
――しまった、と思った。
「あ、悪い。無神経だった。今のは忘れて」
「ああ、忘れる。――それで月音は俺の友達だからね? 拒否したら月音が尾行していたことを碧人にばらすから」
「ひいいいいいっ! 友達! 白桜様が我がお友達ですっ!」
父の名前を出されて、月音は過去イチの悲鳴をあげた。
そしてすぐさま手のひら返しをしたことから、月音の父は怖い系なのか……と煌は新たな情報を得た。
言葉が混乱するほど恐れているらしい。
その脅し、いくら月音が白桜に近づくことをよしとしていなくても選択の余地ねえじゃねえか。
「よかった」
ほっとした顔の白桜を、煌は顔を引きつらせながら見ていた。
月御門……こういう奴だったんだ……。
白桜の清廉なイメージ、払拭。新たに腹黒と書き加えておこう。
煌の脳内変換が行われた。
「そういや今日は水旧(みなもと)一緒じゃねーの?」
いつも隣にいる百合緋がいない。
不思議に思って問うと、白桜が、おや、と煌を見てきた。